小沢健二「魔法的」雑感

魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ
ツアーメンバー
 セットリスト
  • 昨日と今日
  • フクロウの声が聞こえる
  • シナモン(都市と家庭)
  • ホテルと嵐
  • 大人になれば
  • 涙は透明な血なのか?(サメが来ないうちに)
  • 1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)
  • それはちょっと
  • ドアをノックするのは誰だ?
  • 流動体について
  • さよならなんて云えないよ
  • 強い気持ち・強い愛
  • 超越者たち
  • 天使たちのシーン
  • 飛行する君と僕のために
  • ラブリー
  • その時、愛
    <アンコール>
  •  シナモン(都市と家庭)〜フクロウの声が聞こえる

イントロ

──すごかったね。小沢健二のツアー。

すごかったですね。全部終わった今でも、思い出すだけで胸がいっぱいに。

──卓也と「ひふみよ」の話をしたのが2010年だから、あれから6年も経つのか。

そうですね。2012年の「東京の街が奏でる」のときは先輩と会えなかったので。

──で、さっそく今回の「魔法的」の話をしたいんだけどさ。なんかもう、これまでのライブとはぜんぜん違ったよね。

はい。ただ、それを言ったら小沢健二のライブは毎回ぜんぜん違う趣向でやってるんですよね。2010年のライブ活動再開後だけ見ても「ひふみよ」はホーンセクションも加えた11人編成だったし、オペラシティでやった「東京の街が奏でる」は弦楽四重奏が入ったアコースティック編成でした。

──そんで岡崎京子展のときは弾き語りだったって聞いたけど。

2015年3月に世田谷文学館でやったライブですね。あのときはiPhoneでリズムボックスを鳴らしながらアコギ弾いて歌ってました。あと2014年3月「笑っていいとも!」出演のときもアコギ弾き語りでしたね。

──それが今回はいきなりスタンディング形式のライブハウスツアーだもんね。ここ数年はアコースティックな感じだと思ってたのに、いったいどうしたんだろう?

確かに今回はツアータイトルの「Gターr ベasス Dラms キーeyズ」からもわかるように思いっきりロックバンド編成で、これまでおなじみだったモノローグ(朗読)パートもナシ。2時間弱にわたって、ひたすら曲を演奏しまくるというスタイルでしたね。

──しかも17曲中7曲が新曲でしょ。

今年の1月にツアー開催を発表したときに小沢健二は「新曲をたくさんやろうと思います。おなじみの曲もたくさんやりますが、帰り道に体に残っているのは、新しい曲たちだと思います」って言ってましたけど、ツアーが終わった今はもう「本当にその通りだった!」って気持ちですよね。

──うんうん。今も新曲が体に残ってて、ふとした瞬間にメロディ思い出したりするし。

そしてその発表のとき、彼が言ってたもう1つは「歌詞と、メロディーと、バンドの音と、友達のいる、いつも新しい場所へ。なんか、そういうところへ向けて今は歌詞を書いています。その場所で一緒に発狂できたらと思います」っていう話でした。

──発狂!(笑) 確かに発狂するしかないって感じの、めちゃめちゃ熱くて濃厚なライブだった。それをやるために、ステージとの距離が近いスタンディングの会場を選んで、少人数のバンド編成で、息つく間もないセットリストを組んだってことか。

たぶんそういうことですよね。実際あの場所に彼の狙い通りの空間が生まれていたと思います。それじゃあ例によって今回のツアー、1曲目から振り返っていきますか。

昨日と今日

──ステージがスクリーンで覆われて、向こう側が見えないまま始まったよね。いきなり小沢健二の声で「10! 9! 8!……」って。

みんなよくわかんないまま一緒に声をあわせて「1」までカウントダウン。そしたら「昨日と今日」のギターのカッティングが空気を切り裂くみたいに鳴り始めて。

──この曲で始まるのは予想してなかったなあ。

でもこのバンドはものすごいメンバーが揃ってて、演奏がもうキレッキレですからね。1曲目に「昨日と今日」を持ってきたのは、そんなバンドの特徴を伝えるにはベストだった気がします。途中のブレイクの気持ちよさとかハンパなかったし。

──カッコよかったよね。あとは途中「Ah ah」のところでピンクのライトがついて、スクリーンの向こうのメンバーがかすかに見える演出が。

ヤバかったですよね。メンバーのシルエットも羽根が生えてるみたいでなんかヘンだったし。頭に?マークが浮かんだまま盛り上がるというか。でも僕はあの「歌ってくれよ!」とか「もう1回!」っていう声を聴いて「ああ、小沢健二のライブに来たんだな!」って思いました。

フクロウの声が聞こえる

──で、すぐに2曲目が始まるかと思ったら。

始まらなかったですね(笑)。

──無音のままスクリーンに「フクロウの声が聞こえる」って文字が映し出されて、そのあと歌詞らしき文章がどんどん表示されて、しばらく経ってから演奏が始まる。

そのあと「魔法的」のロゴがバーンと出て、みんな拍手!でした。

──ところで「魔法的」ってタイトルはどういう意味なんだろう。「科学的」の反対ってことかな?

「物理的」や「現実的」の反対かもですよね。「日常」の対極にあるものなのかもしれない。英語だとマジカルかウィザードリィってことになるのかな。いずれにしてもあの夜のことを表すのに、これ以上の言葉はない気がします。

──うん、それは同感。そして曲のイントロ終わりでステージを覆ってたスクリーンが落ちて、スポットライトに照らされた小沢健二が歌い始めて「あ、さっきのやっぱり歌詞だったんだ」ってわかるという。

ていうか、この歌詞がすごすぎますよね。

──うん、本当に驚いた。いわゆるJ-POPの歌詞とはぜんぜん違って、英米文学的というか、彼自身がここ数年やってきたモノローグに似てる気もするし。

確かにこれまでモノローグでダイレクトに伝えていた理念や思想が、歌詞の形に生まれ変わった感じはありますよね。日本語のポップミュージックの歌詞というもの自体を大きく更新した気がするし、とにかく今まで見たことのない種類の歌詞でした。だって曲の冒頭から

晩ご飯のあと
パパが「散歩に行こう」って言い出すと
「チョコレートのスープのある場所まで」と
僕らはすぐ賛成する

フクロウの声が聞こえる
大きな魚が水音たてる
いつか混沌と秩序が一緒にある世界へ

ですからね。

──この曲は一人称が「僕ら」=子供の視点なんだ?

「チョコレートのスープ」は近くの森の中にある沼か池のことでしょうね。フクロウが鳴いてるってことは夜の散歩なのかもしれない。

──だから池がチョコレート色に見えるのかな。

彼らの頭上にはこのツアーのキーワードにもなってる飛行機が飛んでいて、「宇宙の力」に導かれて前に進んでいくんだっていう話ですよね。

──進んでいった先にあるのが「本当と虚構が一緒にある世界」「ベーコンといちごジャムが一緒にある世界」っていうこと?

曲調はどっちかといえばダウナーだし、そもそも世界はパキッと割り切れるものでもない。矛盾するいくつかが同時に存在しながら続いていくのがこの世界だってことを伝えてるのかも、って僕は思ったりしました。

シナモン(都市と家庭)

──で、3曲目は謎のダンスとともに始まるこの曲。ホール&オーツの「I Can't Go For That」に似てる気がしたんだけど。

リズムはその曲から借りてる気もしますね。で、そこに乗っかる歌詞は

シナモンの香りで
僕はスーパーヒーローに変身する

っていうやつで。シナモンの香りが漂うような普通の日常が、僕らに強い力を与えてくれて、そんなふうに日々を暮らす1人ひとりが「都市と家庭」を作っていく、この世界を動かしていくってことなんだと思うんです。

──あとこの曲ではメンバー紹介があったよね。

メンバーみんな不思議な動きでカッコよかった。特にHALCAさんがなめらかに動きながらテルミンをキュイーンって鳴らすところとか。

──うん、HALCAの存在感がこのツアーの大事な空気を作っていた気がするね。

ホントにすごいですよ彼女。テルミンと鉄琴とドラムパッドとチューブラーベルを操りながら軽やかに踊り続けるという。

──チューブラーベル

っていう名前らしいです、あの鐘。NHKのど自慢でしか見たことないけど。あと「その時、愛」をはじめとするあのキュートな振り付けもHALCAさんのアイデアらしいです。

ホテルと嵐

続いては1996年のアルバム「球体の奏でる音楽」から「ホテルと嵐」です。もう20年前の楽曲だっていうのに驚きますけど、実際ライブでやったのも1996年以来20年ぶりだっていう。

──基本ジャズトリオ編成だった「球体」期の曲も難なく演奏してしまうこのバンドやっぱりすごいなって思った。

でも今回のライブで聴いたあとでCD音源聴くともうぜんぜん違って面白いですよ。歌い方とかまるっきり違うし。それにしても「手が届かない魔法!」っていう歌詞がこのツアーにぴったりでいい感じでしたよね。

──「魔法ー! ほっほっほっほー!」っていう煽りでみんなが電子的魔法回路をブンブン振ってて最高だった。

そう、今回のツアーの中で魔法的電子回路の存在は大きかったですね。

──ツアー直前の物販告知で魔法的電子回路って書いてあるのを見たときはなんだそれって思ったけど。

赤、青、緑、紫の計4色があって、自由に巻いたり振り回したり。あのキラキラしたフロアの景色すごくよかったですよね。

大人になれば

──そして「ホテルと嵐」からそのまま続けて「大人になれば」。

歌が始まる前に「泣きながら歌おうぜ」って言ってましたね。

──あと、あのスキャットのとこ「歌を聴かせてくれ!」「もう1回聴かせてくれ!」って繰り返すの盛り上がったなあ。

スキャットってけっこう難しいけど、あんなん言われたら歌うしかないですよね(笑)。最後の「夢で見たよな 大人って感じ?」のところもがんがんフェイク入れててカッコよかったし。そしてこの曲の歌詞にも「誰かの歌を聴くと 夏の日は魔法」っていうフレーズがあります。

──「魔法的」ツアーだから「魔法」っていう歌詞がある曲を選んでやってたってこと?

そうかもしれないです。でもぜんぜん無理やりな感じはしないし、そもそも小沢健二の曲にこんなに「魔法」って言葉が出てくるっていうのは今回の新しい発見でしたよね。90年代の曲と、2016年のこの空間が完全につながってるんだなって思った。

涙は透明な血なのか?(サメが来ないうちに)

──そしてあのサメの曲だ!

「波→見る→サメ→来る→泳ぐ」っていうあの踊り、先輩覚えてます?

──忘れようったって無理だよね(笑)。

そうなんですよ。ドアノックダンスやオッケーよ!をはじめとして、オザケンのライブはとにかく踊らせるし歌わせる。行くたびそのこと忘れてて、そういえばそうだった!って思いながら歌いまくるんですけど。

──歌詞もけっこう覚えてるよ。

そうですね。特に僕は

リッケンバッカー橋を渡ると
街はピンク色
着飾った友人たち
お祝いのボトルをPOPしてくれる

っていう冒頭の部分が、都市生活とシンクロしてる感じがして、なんだか嬉しかったです。

──どういうこと?

これは個人的な好みなんですけど、もちろんフクロウとかプロペラ飛行機とかもいいんですよ。でも自分が東京に住んでるせいか、やっぱり都市の空気を感じさせてくれる歌詞にグッと来るところがあって。行ったこともないリッケンバッカーコーズウェイのことを思ってちょっと涙するみたいな。

涙は透明な血なのか?
サメが来ないうちに泳ぎ切る
遠泳者たちの必死さで
「眠ったら、また元気になるよ」と
なだめたりしてる

っていう歌詞も切実で、優しくて、グッときました。

──あとやっぱりこの曲は木暮さんのギターソロがヤバいよね。

ですね。めちゃめちゃカッコよかったです。

1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)

──そして次は「eclectic」の収録曲「1つの魔法」だね。

この曲はライブでやるのは本邦初ですね。

──そうか、2002年の「eclectic」リリース後、「ひふみよ」でも「東京の街が奏でる」でもやってなかったんだ?

たぶんそうだと思います。ツアー後半は「終わりのない / ないあいあいあいあい」っていうフレーズが加わってたりしましたね。「1つの魔法を あなたに返すよ」のところで、魔法的電子回路を客席に投げてるときもあったりして。

──これも「魔法」の曲だしね。あと最後のとこバババってやってたね!

バババってやってましたね(笑)。

それはちょっと

そして「1, 2, some shit!」のかけ声から始まったのが「それはちょっと」。

──「複雑な気持ちで歌おう!」って言ってたよね。

もう結婚して子供までいる人がこの曲を歌うわけですから、そりゃあ複雑な気持ちにもなるよっていうか、この歌をどういう気持ちで歌うんだオザケン!っていう問題ですよね。

──ピョンピョン飛び跳ねながら客に歌わせるのよかった。

うん、でも「でっかい黒い犬でも飼って」とかはともかく、「金婚式 お葬式って」っていう歌詞を何千人が歌ってる光景、普通に考えてだいぶおかしいですけどね。

ドアをノックするのは誰だ?

「次の曲は僕のギターと白根くんのドラムだけで始まってみます」っていう前置きがあって。

──何が始まるのかと思ったら「ドアノック」だった。

この曲では小沢健二のギタリストとしてのすごさを改めて感じますよね。アコースティックギターであの高速アルペジオを弾きながらあのエモい歌を歌うとか普通はできない気がします。でも僕はこの曲で1つだけ物足りないところがあったんですよね。

──ん?

この曲の最後は「それ分かってる?」で終わるんですけど、オリジナルバージョンに入ってる「meet me meet me in your soul」っていうのやってくれてもよかったんじゃないかなって。「ひふみよ」のときに英語の歌詞を避けてたのはわかるんですけど、今回はもう解禁してもいいんじゃないの、あそこすごく好きなんだけど!って思いながら聴いてました。

流動体について

──この曲すごかったね。BPMが速くて曲調もアッパーで。歌詞の断片からもなんだか強い決意みたいなものを感じてグッときた。

わかります。このライブのちょうど真ん中の位置に置かれて、他のどの曲ともつながっていない。ものすごく重要な曲だと思うし、思い切って言うならば、僕はこの曲は新しい「ある光」だと思うんです。

──どういうこと?

アンサーソングと言ってもいいかもしれない。「ある光」という曲は多くのファンにとって、そしておそらく小沢健二本人にとっても特別な意味を持つ曲ですよね。1997年の12月にこの曲をシングルで発表して、その翌月の1998年1月にリリースされた「春にして君を想う」というシングルにも再度フルレングスで収録されている。そしてその後まもなくして、彼は日本の音楽シーンから消えてしまう。

──そういえばそうだったね。もう20年近く前のことだ。

そんな「ある光」で歌われている歌詞は「この線路を降りたらすべての時間が / 魔法みたいに見えるか?」っていうもので。

──えっ、魔法?

そう、全部つながってるんです。そして結果的に当時の小沢健二はそのまま“線路”を降りて日本を離れることになります。その後は第三世界を含む多くの国を訪れて、いくつかのアルバムを作ったり、「うさぎ!」という小説を書いたりしながら、深い思索と行動を重ねていったんだと思う。

──家族ができたことも大きいだろうね。

そうでしょうね。そういう経験を経て完成した「流動体について」ですけど、

羽田沖 街の灯が揺れる
東京に着くことが告げられると
甘美な曲が流れ
僕たちは しばし窓の外を見る

もしも
間違いに気がつくことがなかったのなら?
平行する世界の僕は
どこらへんで暮らしてるのかな
広げた地下鉄の地図を隅まで見てみるけど

 っていう歌詞。これがいろいろ深読みできるんですよね。「ある光」でJFK空港にいた“僕”は「流動体について」で羽田空港に戻ってきていて、あのとき線路を降りた“僕”が今、俯瞰視点で地下鉄の地図を眺めている。

──歌詞にカルピスが出てくるのも日本に戻ってきた感じあるもんね。

あ、確かにそうかも。

──でも「間違いに気がつくことがなかったのなら?」っていうのはどういうことなのかな? あの当時の日々が「間違い」だったってこと?

そこについては、美術館ライブにヒントがあったりするんですけど。

──ああ、「魔法的」ツアーの終盤に、金沢と大分の美術館で弾き語りのライブをやったんだっけ。

はい、この美術館ライブについてはあとでまた詳しく話しますけど、そこで語られたモノローグの中で、彼は「Olive」誌で連載をしていた90年代当時を振り返って、「僕の今の文体やものの考え方は、数年間『ドゥワッチャライク』を書いていなかったらなかったと思う。もちろん『ドゥワッチャライク』だけではなく、当時の僕が経験した、騒がしく、狂おしく、絶対に持続不可能な数年間がなかったら」っていう話をしてました。

──狂騒の中に身を置きながら、その日々が持続不可能なものだということがわかっていた?

そういうことですよね。やろうと思えば無理やり続けることもできたかもしれないけど、もしその道を選んでいたら、平行世界の小沢健二の姿は今とはだいぶ違っていたはずで。少なくとも「魔法的」がこんなにキラキラと輝いて僕らの胸を打つことはなかったと思うんです。あの日々そのものが間違いだったってことじゃなく、あの狂騒を引き受け続けることが不可能だった。そのことに気が付いて線路を降りたっていうことなんじゃないかな。

──それにしても「流動体」ってなんのことだろう?

それについて考えるときには

だけど意思は言葉を変え
言葉は都市を変えてゆく
躍動する流動体

っていう歌詞がひとつ重要なキーワードになると思います。「言葉は都市を変えてゆく」っていうフレーズは今回の美術館ライブのタイトルにもなってるくらいだし。なんというか「ある光」を書いた頃、小沢健二は先が見えないままの状況にいたんだと思うんです。だから「この線路を降りたら 虹を架けるような誰かが僕を待つのか?」なんて不確かな希望を歌にしたりして。でも「流動体について」の歌詞にはもっと能動的な強い意思が見える。僕ら1人ひとりが自分の意思を言葉にして伝えていく。それがやがて都市の形を変えていく。都市は固定されたものじゃなく、流動的に移り変わっていくものだっていうことですよね。

──なるほど。

個人の力が世の中を動かすっていう話は、この曲だけじゃなくて、2015年3月に「GINZA」別冊の復刊「Olive」で書かれた「ドゥワッチャライク」の内容にも通じるし、岡崎京子展の図録に寄せた「『みなさん』の話は禁句」っていうテキストも逆説的に同じことを言ってると思う。「シナモン(都市と家庭)」も「超越者たち」も「飛行する君と僕のために」も、そしてそのほかのたくさんの曲も同じメッセージを内包してると思うんです。

神の手の中にあるのなら
その時々にできることは
宇宙の中で良いことを決意するくらいだろう

無限の海は広く深く
でもそれほどの怖さはない
宇宙の中で良いことを決意する時に

 まさにこの歌詞の通りで、僕たちがその瞬間ごとに覚悟を決めて、この宇宙を良くしていくしかないってことなんだと思う。目の前にあるのは無限の海で、やっぱり先は見えないままなんだけど、でも今の僕らはそこに新しい一歩を踏み出すことができる。この曲はそんな決意について歌っていて、今の彼の新たな決意がこの曲には詰まっていて、だからこそ僕らの胸を強く打つんだと思います。

さよならなんて云えないよ

──それにしても「持続不可能な数年間」なんて話を聞くと、この曲がよけい切なく聞こえちゃうね。

「二度と戻らない美しい日にいると / そして静かに心は離れていくと」ですからね。「ポケットの中で魔法をかけて」っていう歌詞もあるし。

──でも「思いっきりー!」って煽られて、みんなで「美しさ Oh Baby!」って歌うの最高だった。この瞬間こそが二度と戻らない美しい日だって思ってた。

強い気持ち・強い愛

そのまま続けて「強い気持ち・強い愛」。おなじみの「フッフッフー」っていうコーラスと、HALCAさんの鐘の音で、この曲だってわかった瞬間の盛り上がりっていったらもう。

──会場全体ぶちあがってたね。

魔法的電子回路の光が、会場中の興奮と呼応するみたいに輝いてましたね。この曲にも「パーッと華やぐ 魔法をかける」っていうフレーズがあります。

超越者たち

──「さよならなんて云えないよ」「強い気持ち・強い愛」「超越者たち」の3曲はノンストップでつなげて演奏してたね。

めちゃめちゃ力強かったですよね。ここは普通に行けば「強い気持ち・強い愛」で一旦終わってその余韻を感じたいとこなんだけど、ノンストップで2つの曲がつながって「超越者たち」が始まるのにはやっぱり意味がある。よし! このまま行こう!って気持ちになる。

──確かにこの2曲からはどこか似た印象を受けたかも。

「長い階段をのぼり 生きる日々が続く」っていうのと「高く昇る梯子の先が見えぬ時も」っていうのは同じことだと思うんです。人生の先に何があるかなんて誰にもわからないけど、勇気さえあれば進んでいけるんだ、進んでいかなきゃならないんだっていう。特にこの曲は、父親から子供に語りかけるような歌詞がいいですよね。

──「凜々しい音の鐘を打ち鳴らし」っていう歌詞もそういうこと?

うん、息子の凜音(りおん)くんの名前ですよね。

天使たちのシーン

──この曲はちょっと不思議な感じだったよね。特に歌メロが。

インプロビゼーション=即興のメロディで歌ってましたね。僕も最初は「?」っていう気持ちだったんですけど、ツアー中盤6月11日の東京公演からはこの曲の前にMCが追加されて、「どんな歌も最初に作ったときは即興で、それを生け花みたいに整えて、それが作曲というものなんだけど、この曲は野の花みたいにババッと歌ってみたくて、毎回違うメロディで歌っています」っていう趣旨の話をしていました。

──全部の会場でそれぞれ違う即興のメロディを歌ってたんだ?

そうです。あと「そうやって歌うことで、この歌詞を書いたときの、先の見えない感じとか、その中を行こうとする勇気みたいなものを感じる気がして」ってことも言ってましたね。

──そしてこのツアーでは「天使たちのシーン」は最後までやらずに、曲の途中で次の曲に移っていくよね。それがちょっと意外だったんだけど。

それについては「次にやる新曲も勇気みたいなものをテーマにした曲で、木々の間から空を見上げるところで、そこにつながっていきます」っていう話をしてました。その感じはすごくわかるというか、先が見えなくても行かなきゃならないんだっていう意志と勇気の話です。この一連のパートは聴いてるこっちの背筋が伸びる感じがありましたよね。

飛行する君と僕のために

──というわけで「天使たちのシーン」から続けてこの新曲。始まる前に暗いステージでバンドメンバーがみんな青い魔法的電子回路のスイッチを入れて、ガラッと雰囲気変わったよね。

特にHALCAさんの腕とスカートがつながって光ってるのカッコよかった。この曲は

眠れない夜がろ過する
勇気を燃やし 飛び立てる
大丈夫かな? これでいいのかな?
半信半疑 本当のことを運んでゆく

っていう歌詞ですよね。先が見えない中を勇気ひとつ抱えて進んでいくっていう意志が描かれている。

──「重力に逆らう」曲だよね。

物販で抽選で売ってたロングジョン(股引)のテーマ曲でもあります。この曲でも飛行機っていうキーワードが出てくるけど、決して無鉄砲に突っ込んでいくわけじゃない。冬の三日月みたいなかすかな手がかりを頼りに、科学と文学を味方に付けて進んでいくんだっていう。

ラブリー

──そして次の「ラブリー」は「飛行する君と僕のために」からつながって、ステージ上が暗いままで始まったんだっけ。

「暗闇の中で歌おう!」って言ってましたね。1番が終わるとこでパッとピンクの照明がついて、うわー!ってなった。

──「ひふみよ」のとき「感じたかった僕らを待つ」だった歌詞は「LIFE IS COMIN' BACK」に戻ってたね。

それは「東京の街が奏でる」のときからそうですね。そのあとの「完璧な絵に似た」は日本語詞のままでしたけど、もうこれ馴染んでるし、ずっとこれでいいなって思います。

──あとこんなシンプルなバンド編成でも、ちゃんと「ラブリー」になってるのがすごいなって思ったな。

ですよね。フルートはいなかったから代わりに僕らが歌ったけど(笑)。どこかの会場ではこの曲が終わったあと「『ラブリー』はやっぱり楽しいですね」って言ってました。

その時、愛

──これが本編最後の曲。まずスクリーンにサビの歌詞が表示されて「この歌詞を一字一句間違えず覚えて」って言われて、みんな笑いながらも必死で覚えるという(笑)。

でも実際歌えちゃうんですよね。

──振り付けもばっちり覚えたしね。

この曲はあのかわいい振り付けの印象が強いけど、実際すごく骨太でファンキーな曲でしたよね。電子回路の曲だし、音楽についての曲でもある。「電子回路の中では 魔神たちが / じゃんがらもんがら GET DOWNしてる」。さらに何よりも愛についての歌で、なんとなく僕はこの曲が「戦場のボーイズ・ライフ」の続きみたいな気がしたんですよね。

──どういうこと?

「戦場のボーイズ・ライフ」では「この愛はメッセージ!祈り!光!続きをもっと聞かして!」って歌われていて、そんな歌の続きを今の僕らがこのメロディに乗せて歌って、それを小沢健二が聴いているっていう、そういう構図なのかなってちょっと思ったんです。この曲こそがあのときの“メッセージ”の続きなんだって。

──「ちょっと出かけたライブの会場で / 憶えた歌を / 口ずさんでみる」っていう歌詞があったもんね。

最初からそういう作りになってる曲なんだ!ってビックリしました。もうそんなこと言われたら歌うしかないし。繰り返し歌ってるうちに身体に染みこんでくる感じが心地よかった。今でもあのサビは間違えずに歌えます。

その時 胸の中へ愛 まっすぐに
届く 届く そう信じたい
暗闇 一すじの明かりで照らし
飛べる 飛べる そう歌いたい

シナモン(都市と家庭)〜フクロウの声が聞こえる

──アンコールでは暗闇の中にメンバーがスタンバイして、「5! 4! 3! 2! 1!」のカウントダウンから、2回目の「シナモン(都市と家庭)」が始まるっていう。

だいぶショートバージョンでしたけどね。「オオカミのように 月に吠える」のとこでみんなで思いっきり吠えたりもして。そして「シナモン」のあとは、新曲7曲を録音で振り返る例のパートに突入です。

──あれすごかったね。その日にやった新曲をアンコールで、ライブ音源聴きながらおさらいするとか、そんなのやったことない(笑)。

でもああやって復習することで新曲を鮮やかに思い出せたし、心にしっかり焼き付けることができました。

──面白かったなあ。そして最後にもう一度「フクロウの声が聞こえる」がフルレングスで演奏されたんだよね。

でもアンコールの「フクロウの声が聞こえる」は、ライブの冒頭で聴いたのと印象違って聞こえませんでしたか?

そうかもしれない。2回目のほうがファンキーというか、ぐわーっと心を持っていかれる感じがした。でもアレンジは同じだよね?

アレンジもBPMも同じだと思うんですけどね。最初に聴いたときはこっちが緊張してたせいかもしれないけど、同じ曲をやってても、曲っていうのは生き物で、そのたびに変わるもんなんだなって思いました。

──そして全部の曲が終わったあとは、もう一度メンバー紹介をして、スタッフにも拍手を贈って。

そのあとツアー前半のいくつかの会場では「小沢健二のライブを初めて見るっていう人はどれくらいいますか?」って質問をしてました。これには半分くらいが手を挙げてた感じで、本人もちょっと驚いてたみたいです。ツアー終盤では、ステージから見えるお客さんの顔がみんな本当にいい顔だって言ってて。あと「いろんな人から新曲がいいって言ってもらえるんだけど、これを歌わせてくれてるのは皆さんです。ありがとう」っていう話が何度かありました。

──そして最後はまたカウントダウンだね。

真っ暗になって、小沢健二が「日常に帰ろう」って言って終わりでしたね。

──あの「日常に帰ろう」っていうのはどの公演でも言ってたの?

そうみたいです。みんな覚えてないかもしれないけど、あの言葉は「東京の街が奏でる」の最終日でも言ってたんですよね。ウェブサイトに本人が書いた記録があります。

去らない満員のお客さんを見渡す舞台に戻ると、まるで目の前に字幕が出たように、ああ、ここで「日常に帰ろう」と言うんだな、とわかったので、そう言った

あのときはメトロノームの音を聴きながら、みんな会場を出て日常に帰っていきましたよね。でも魔法が解けてもただそれまでと同じ日常に戻るわけじゃなかった。あの空間で強く感じたことは、自分の中に今もしっかりと残り続けていて。だから「日常に帰ろう」っていうのは「日常に持ち帰ろう」っていう意味なんだって、僕は勝手にそんなふうに思っています。

言葉は都市を変えてゆく 小沢健二 美術館セット×2

──そういえばツアー終盤の美術館ライブはどうだったの?

セットリストは2公演とも同じで、こんな感じでした。

  • back to back
  • ある光
  • 神秘的
  • モノローグ「仮面のミューニアム」
  • シナモン(都市と家庭)
  • モノローグ「さらにミューニアム」
  • ぼくらが旅に出る理由
  • 飛行する君と僕のために
  • モノローグ「時差ボケは傷跡のように治る」
  • 天使たちのシーン
  • モノローグ「Is this Nihon or not Nihon?」
  • 春にして君を想う
  • 今夜はブギー・バック
  • 大人になれば
  • モノローグ「オリーブは生きている」 
  • 天気読み
  • 強い気持ち・強い愛
  • モノローグ
  • 流動体について

基本は2015年の岡崎京子展のときと同じく、リズムボックスに打ち込んだビートをiPhoneで鳴らして、その上でアコギの弾き語りをするっていうスタイルで。ビートは飛行機の中で自分で打ち込んだって話してましたね。あと演奏中は途中でフランジャーっぽい効果音を加えて変化を付けたりもしてました。

──会場はどんな場所?

金沢は美術館内のシアターみたいなスペースで、真っ暗な中に映画館みたいに椅子が配置されていて、180人くらいのキャパだったのかな。大分はロビーみたいなスペースにありったけの椅子が集められて、一段高くなった簡易ステージを丸く囲む形で。こちらは照明がついたまま明るい中でのライブでした。

──モノローグもあったんだよね。

家族の話が多くて、それもなんだかよかったです。息子のりーりーが美術館が好きだっていう話、時差ボケが起きるのは肉体に魂が追いつくスピードが違うからだっていう話、りーりーがどんなとき / どんなものに“日本”を感じるかっていう話。そして2015年の「Olive」に掲載された「2199年のドゥワッチャライク」の朗読+αです。「Is this Nihon or not Nihon?」は、金沢と大分で少し内容が違っていて、大分では大分県立美術館に来る途中でのエピソードが盛り込まれたりしていました。

──それにしてもセットリストすごいね。「ある光」も「ブギー・バック」もやったんだ?

金沢の「ブギー・バック」は小沢健二がラップ部分もメロディアスに歌う例のスタイル。大分はサプライズでBoseさんが登場してラップして、みんな倒れそうなくらい盛り上がってました。ANIさんのラップパートは観客がみんなで担当するっていう形です。あと「天使たちのシーン」はツアー本編とは違って、アルバムに入ってるのと同じメロディを歌ってましたね。どっちも最高でした。

──新曲を弾き語りでやるとどういう感じになるんだろう。

言葉で言うのはもちろん難しいんですけど、歌の核が剥き出しのままそこにある感じというか、やっぱりすごく強い曲だなって改めて思いました。そのほかの曲についても、個人的にはあんなにアッパーな「天気読み」は聴いたことがない気がするし、「大人になれば」のラストのフェイクもガチ盛り上がってたし、曲によっては「歌える?」って聞かれてみんなで歌う場面もあったりして。

──かなり充実した内容だったということね。

どちらの会場もたっぷり110分くらいやってましたね。金沢は最後のカウントダウンから「日常に帰ろう」で暗転。大分は会場が明るかったからか、最後の曲が終わってそのまま終了になりました。

アウトロ

──というわけで「魔法的」ツアー14公演+美術館ライブ2公演=計16公演。本当に終わっちゃったんだな。ツアーは最終日の福岡だけがホール公演だったんだよね?

Zepp Fukuokaはこの5月で閉館しましたからね。今回は「ひふみよ」の最終日と同じ福岡サンパレスで、当日は6年前と同じように雨が降ってました。

──ホールならではの趣向は何かあったの?

基本は同じでしたけど、他の会場だと2つ並んで表示されてた歌詞が、福岡はステージが広いせいか、大きく1つだけだったのが違うっちゃ違うとこですかね。あと福岡はダブルアンコールがありました。

──えっ! それはうらやましい。

「日常に帰ろう」で暗転したあと、突然「流動体について」の演奏が始まって照明がつきました。そして本当の最後に小沢健二が「ありがとう」って言ってツアー終了です。

──すごいね。

ものすごかったです。

──あと今回のツアーで特筆すべきはバンドメンバーだったと思うんだけど。

ですよね。小沢健二バンド初参加はキーボードの森俊之さんとアナログ機材担当のHALCAさん。森さんのキーボードはもう圧巻でしたね。同じ人が弾いてるとは思えないほど多彩なフレーズを次々と繰り出して、まさに八面六臂の大活躍でした。HALCAさんは小沢健二曰く「どの楽器も無茶ぶりでやってもらった」そうですけど、やっぱりめちゃめちゃ華があって、彼女の存在がステージの温度を上げていた気がします。

──おなじみのメンバーもバッチリだったし。

ベースの中村キタローさんは90年代からバンドを支えて、再開後のライブも皆勤賞ですからね。今回はシンセベースを弾いてる場面がいつもより多かったかも。

──残る3名は「ひふみよ」以来の参加だよね。

そうですね。ドラムの白根佳尚さんについては、ライブ終わったあといろんな人に「あのすごいドラムは誰!?」って聞かれましたけど、Dezille Brothersのメンバーで、久保田利伸バンドでも叩いてたり、2015年はKREVAさんと47都道府県ツアーを回ったりっていう人ですね。ギターの木暮晋也さん、パーカッションの及川浩志さんは今さら説明不要なほど、90年代からずっと小沢健二バンドの鍵を握る2人です。

──ところで気になるのは、このツアーでやった新曲7曲がアルバムとしてリリースされるのかどうかってことなんだけど。

んー、それはほんとにわかんないですよね。そもそも2010年の「ひふみよ」で発表した「いちごが染まる」「シッカショ節」「時間軸を曲げて」も、2012年の「東京の街が奏でる」で発表した「東京の街が奏でる」「神秘的」も、今のところあわせて計5曲がまだスタジオ音源としてはリリースされてないわけだし。

──会場では映像作品制作のための撮影をしているってアナウンスもあったけど。

そのアナウンスは「東京の街が奏でる」のときもありましたけど、あれから4年経っても何かが出る気配はまったくないですからね。「ひふみよ」のライブ音源が「我ら、時」のタイトルで発売されたのもツアー終了から2年後だったし。ファンはもう期待半分あきらめ半分で気長に待つしかないんです(笑)。

──そうなのかあ。

ただ、もしすぐにアルバムを出すことが決まっていたら、あんなふうに7曲をプレイバックしたり、丁寧に歌詞を出したり、アンコールで同じ曲を繰り返して演奏したりはしないような気もするんですよね。だからやっぱり今のところは何も決まってない、誰にもわからないっていうのが正解なんじゃないかなって。

──なるほどね。じゃあここまで長いこと話してきたけど、そろそろまとめてみる?

あの、ここから先は完全に僕の妄想なんで、話半分で聞いてもらってかまわないんですけど。

──大丈夫。ここまでも全部妄想だったから。

そうですけど(笑)。なんというか、僕はこのツアーの中心にあるのはやっぱり「流動体について」なのかなって思うんです。この曲ができたからこそ、小沢健二はこのバンド編成で、ライブハウスを回るツアーをやろうと思ったんじゃないかって。

──ほう?

だって少人数のロックバンドでぶちかますための曲じゃないですか。そして曲の内容も、さっき長々と話したとおりで、ものすごく重要な位置付けの曲だと思うし。

──しかもものすごくいい曲だしね。

「ひふみよ」は13年ぶりのライブで、新曲もあったけどやっぱりライブ活動再開という事実のほうが勝っていた気がする。「東京の街が奏でる」は東京オペラシティ12DAYSというコンセプチュアルな形で、やっぱり特殊なライブでした。それにこれらのライブはどちらも新曲は2、3曲で、「LIFE」期の楽曲を今の時代にどう見せるかっていうことに重点が置かれていた気がするんです。でも今回の「魔法的」はそれまでのライブとは明らかに違うんですよね。圧倒的に現在進行形で、ここから先を想起させる力がある。

──なるほど。

新曲が多いこともそうだし、バンドの力強さもそう。新しい言葉と音で日本のポップミュージックを更新したんだって感じがする。遠い国で活動している孤高の芸術家ではなく、この日本の音楽シーンのど真ん中に再び舞い降りてきた。このツアーがライブ活動再開後の小沢健二の本当の帰還で、本当の始まりだと思うんです。

──「『はじまり、はじまり』と扉が開く」?

まさにそれですね。

──これからどうなるのかな?

スタジオレコーディングのニューアルバムを出すとか、なんならテレビの歌番組に出るとか、そういうわかりやすい活動じゃなくてもいいと思うんです。そういうことをしなくても、日本の音楽シーンはもう小沢健二を無視することはできないと思う。だってこれほど新しくてものすごいライブをやったんですよ。

──確かにそうかも。観た人はみんな大絶賛だったもんね。

あとちょっと思ったのは、MCで「新曲7曲はこのツアーのために最近書いた曲です」って言ってたじゃないですか。ていうことは、その気になればあのクオリティの曲をがんがん書けるってことなのかなって。

──そうか、だったらどんどん書いてほしい気が!

ですよね(笑)。そして近いうちにまたライブをやってほしい。続きをもっと聴かせてほしいなって、僕はそんなふうに思ってます。