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小沢健二「ひふみよ」雑感

音楽

ひふみよ 小沢健二 コンサートツアー 二零一零年 五月六月

ツアーメンバー

セットリスト

  • 流れ星ビバップ
  • 朗読:闇
  • 流れ星ビバップ
  • ぼくらが旅に出る理由
  • 朗読:ひふみよ
  • 天使たちのシーン
  • いちごが染まる(新曲)
  • ローラースケート・パーク
  • 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー
  • ローラースケート・パーク
  • ラブリー(練習)
  • 朗読:大衆音楽
  • カローラIIにのって
  • 痛快ウキウキ通り
  • 天気読み
  • 戦場のボーイズ・ライフ(ボーイズ・ライフpt.2:愛はメッセージ)
  • 強い気持ち・強い愛
  • 今夜はブギー・バック
  • 朗読:自転車
  • 夢が夢なら
  • 麝香
  • 朗読:笑い
  • シッカショ節(新曲)
  • さよならなんて云えないよ(メンバー紹介)
  • ドアをノックするのは誰だ?(ボーイズ・ライフpt.1:クリスマス・ストーリー)
  • ある光
  • 時間軸を曲げて(新曲)
  • ラブリー
  • 流れ星ビバップ

<アンコール>

  • いちょう並木のセレナーデ
  • 愛し愛されて生きるのさ

イントロ

──すごかったね。小沢健二のツアー。

すごかったですね。全部終わった今でも、思い出すだけで胸がいっぱいに。

──タクヤは何カ所か行ったんだよね?

僕は全部で8公演行きました。先輩は?

──俺は東京1カ所観たよ。セットリストはどの会場も同じだったの?

基本は全部同じでした。今回のライブ自体すごく緻密な構成だし、朗読とのつながりもあるし、曲順にちゃんと意味があるから会場ごとに変えていくって感じじゃなかったですよね。

──じゃあツアーも終わったことだし……。

ネタバレ気にせず感想話していきますか。

流れ星ビバップ〜朗読:闇〜流れ星ビバップ

──びっくりしたね。ライブ冒頭、会場がいきなり真っ暗になった。

うん、自分の手も見えない本当の暗闇で。隣の人が立ってるのか座ってるのかもわかんなかったですよね。会場によっては足元灯がついてて少し明るいところもあったんですけど。

──そんな中、小沢健二の声で「東京ー!」って。

あ、それ初日の相模大野はなかった気がします。やっぱりツアー序盤は小沢健二も緊張してたんじゃないかな。その後は各地でそこの地名を言ってたみたいです。

──で、すぐにスカパラ沖さんが「ひい、ふう、ひいふうみいよ!」ってカウントして1曲目「流れ星ビバップ」からライブ開始。でも演奏が始まっても真っ暗なまま。あれは斬新だよねえ。

こっちは動揺しますよね。何にも見えないまま、オルガンとキーボードとパーカッションと小沢健二の声だけが聞こえてきて。「うわー!」ていう興奮と「なにこれ?」ていう不安が混ざった感覚に。で、1番が終わって間奏で1回音が止まって、小沢健二の手元の小さな灯りがつく。

──うん。

小沢健二が右手にA4くらいの紙の束を持って、「2003年……」って話し始めて、最初の朗読タイム。ニューヨークの停電の話でしたね。

──一瞬何が起きたかわからなかったけどね。突然朗読始めるんだもん。内容はええと……、2003年ニューヨークで大規模な停電が起きたとき、非日常の中でみんなが助け合って夜を過ごして、そこで小さなラジオやCDプレイヤーから音楽が流れてて……。

「真っ暗闇の中で音楽を聴いた日のことは絶対に忘れない。その記憶は消えることがない」

──そうそう。そのくだりが暗闇の中にいる自分たちの状況と重なって、「ああ、確かに今のこの瞬間のことは忘れることはないだろうなあ」って。そう思わなかった?

思いました。例えば10年後にこの日のライブのことを考えたとして、真っ先に思い出すのはこの冒頭の暗闇の記憶ですよね。

──で、朗読が終わると小さな灯りが消えて、「流れ星ビバップ」再開。

真っ暗なままで1曲通してやりましたね。ちなみに先輩、流れ星見ました?

──何のこと?

実はこの曲が終わるところで、ステージのバックに流れ星が流れることがあるんです。2枚あるスクリーンの間を右から左に電飾が光って、流れ星みたいに見える演出が。

──いや、俺は見なかったけど、それはどの会場でもあるわけじゃないの?

流れ星はたまに流れるだけです。流れ星とはそういうものだから、ということだと思うんですけど。

ぼくらが旅に出る理由

──そして2曲目で照明がつくかと思ったら……。

つかなかったですね(笑)。

──真っ暗なまま「ぼくらが旅に出る理由」。しかもこの曲はアレンジがだいぶ違ってたよね。

そうですね。この曲はCDの通りにやろうと思ったらオーケストラが必要だし。原曲はとにかく高揚感の固まりみたいな曲ですけど、今回のアレンジはちょっとゆったりしたホーンのフレーズが効果的で。あ、そういえば「ぼくらが旅に出る理由」は「戦場のボーイズ・ライフ」のシングルのカップリングに95年のライブ音源が入ってるんで、ライブの後でちょっと聴き比べてみたんですよ。

──お、どうだった?

やっぱり声が違うっていうのは感じました。

──そう? 今回のツアーの小沢健二のボーカルはあの頃のままじゃなかった? 基本的に声はすごく出てて、たまにピッチがずれたりするところもあるけど、気持ちが入っててそのあたりもいい感じで。

あー、僕もそう思ってたんです。確かにあのエモーショナルな歌い方は変わらずで。でも比べると当時の歌声はやっぱり今よりだいぶかわいらしいです。ニューヨークでのボイストレーニングの成果なのか今のほうが声が太くなってるし堂々としてる。「Eclectic」を経て、ちょっと大人っぽさを増したっていうのは感じました。

──で、結局照明がついたのどこだっけ?

1番のサビでパッと明るくなって、ステージにメンバー11人ずらり! あのときの客席の盛り上がりはすごかったですよね。気が狂うかと思った。しかも小沢健二が両手をわーってやって客を煽る煽る!

──あのさ、実は俺あのときこのままライブ全編暗いままかと思ってちょっとビビってた。照明ついてよかった。

それ僕も思ってました(笑)。明るくなってよかったですよね。

朗読:ひふみよ

朗読は最初にタイトルを言うのと言わないのがあって、これは言わなかったので「ひふみよ」ていうのは僕が便宜上付けたタイトルです。

──数の数え方の話をしてたよね。

鳥たちに国境はない。猫たちに国境はない。日本人はメキシコ人に似ている人が多い。想像力には限りがない。何かにぶつかる。それでも飛び立とうとする。とかなんとか。メキシコ人に似ている男の人が多いっていう箇所では、及川さんの顔を見たり、会場によっては北原さんの顔を見たりして観客を笑わせてましたね。あの、僕はこの朗読パートでライブの方向性が見えた気がしました。単に昔の曲をやるだけじゃなく、「うさぎ!」や映画上映会を経た現在の小沢健二のメッセージをちゃんと伝えるつもりなんだなっていうのがはっきりとわかった。

──ふんふん。

今回のツアーは「LIFE」期=94〜96年頃の曲をやる、というふれこみで、それが発表されたとき僕はすごく嬉しくて、でも同時にどこかで「懐メロ大会になるんじゃないか」という危惧もあったんです。そして「もしそうなったとしてもぜんぜんOK」と思っていた。だけど実際蓋を開けてみると、そこにあったのはまったく新しい“2010年の小沢健二の表現”でした。その象徴がこの朗読パートだったと思うんです。

──なるほど。小沢健二はウェブサイトでツアーの展望について語ってたよね。ええと、どれだ。あ、「本当にどう楽しんでいただいてもいいんですが、曲は九四年とか九五年に書いたものが多いと思うけれど、コンサートで生まれる空間自体は新しい感じになると思います」って書いてある。

正直最初に読んだとき、その言葉の意味はよくわからなかったけど、でもその“新しい空間”が、文字通り、本当にあのステージ上にあったと思います。

──ところで朗読の間演奏されてるインストの曲は、あれ何だったの?

8分の13拍子の南米風の曲ですよね。小沢健二は「これも新曲です」って言ってました。だから今回のライブの新曲は計4曲ってことになりますね。この曲のタイトルについてはどの会場でも触れられてないと思います。

天使たちのシーン

──で、小沢健二がチャラランってあのコードを弾いて、ドラムが入ってきて、「天使たちのシーン」を歌い始めるわけだけど。ねえ、この曲は歌メロずいぶん違ったよね?

違いましたね。

──あのメロディはアドリブで変えてたの?

いや、アドリブじゃなく、ちゃんと毎回同じように歌う新しいメロディです。真城さんのコーラスもメロディにあわせてついてたし。

──実は俺は正直違和感があったんだけど……。

僕も初めて聴いたときは「えっ?」と思いました。CDで何百回も聴いたあのメロディが体に染みついてますからね。

──そうそう。

でも、2回、3回と聴いてたらすごく馴染んできました。いいですよ、あのメロディ。軽やかで。

──あー、確かに原曲よりもポップというか、躍動感ある感じはしたね。

僕は今回ああいう形で演奏したのはすごくよかったと思うんです。もともとこの曲は「生と死」について、なかでも「死」について歌った曲で、実際いろんな死者に捧げられてきたわけですよね。

──95年「VILLAGE」の東京公演はスカパラのギムラさんに捧げてたって話を聞いたけど。

今回も6月10日のNHKホールでは「青木達之さんに捧げます」って言って演奏してて。でもだからってただしんみり演ってりゃいいかっていうとそういうわけでもない。たくさん人が死んだけど、僕たちは死者の思い出だけを積み重ねて生きていくってわけにもいかない。単なるレクイエムじゃなくて、死者に捧げるためだけの曲じゃなくて、この曲に新しい息吹を与えるためにはあのメロディが必要だったんだって、僕はそんなふうに思ってます。

──ほう。

小沢健二のギターソロもポップだったし。ライブの序盤でさらっとやったのもよかった。

──なるほどね。

あと、「ラジオからのスティーリー・ダン 遠い町の物語話してる」が「ラジオからのいちょう並木 この町の物語話してる」に変わってたのもさりげなく重要なポイントですよね。スティーリー・ダンが歌うのは遠い町の物語だけど、いちょう並木はこの町で鳴り続けてる僕らのための音楽で。今回のツアーで小沢健二は「この町」で演奏してるっていうことにすごくこだわってた気がします。

いちごが染まる(新曲)

天使たちのシーン」に続いては、新曲「いちごが染まる」。この曲はニューメキシコの真っ暗な夜の中で作った、バンドメンバーが喜んでくれるような曲を作りたくて作った、っていう話をしてました。

──3拍子の曲だよね。いちごの種を植えて、それが育つとあなたは喜ぶ、みたいな歌詞だった。

そうですね。ステージでは小沢健二に赤いライトが当たって。僕の知る限り、6月9日のNHKホールと6月25日の福岡サンパレスではアンコールの後、一番最後にこの曲をもう1回やってました。NHKホールのときは「地元なので古い友達やお世話になった人がたくさん来てくれてる。感謝の気持ちを込めてもう1曲やります」みたいな話をしてました。後から聞いたんだけど、この日は客席に小山田圭吾さんが来ていたそうです。

ローラースケート・パーク〜東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー〜ローラースケート・パーク

ここはメドレーですね。「ローラースケート・パーク」の1番の終わりで突然「バーラーバー!」って「東京恋愛専科」が始まる。

──意表を突かれた。でも「バーラーバー」の振り付け楽しかった(笑)。

振り付けは当時からのお約束ですからね。あと、以前は「地獄へ落ちるでしょ」のところをブレイクにして観客に歌わせてましたけど、今回は「BASELINEにのって歌いましょう(踊りましょう)」のところで煽ってたのが、昔とちょっと違うところですかね。

──あ、「バーラーバー」のところのメロディがCDと違ってたでしょ。

そうですね。そこはそんなに深い意味はないような気がしますけど。あと「ローラースケート・パーク」の歌詞も「ローラースケートで滑って回ろう」が「ローラースケートで走って回ろう」になってました。

──ていうか、なんでこの2曲をメドレーでやったのかな?

実は94年の「THE LIFE SHOW」も95年の「VILLAGE」も96年の「レヴュー96」のときも、この2曲はつなげて演奏してるんです。でも今回わざわざ間にはさんだのは、僕が思うに序盤での宣言なんじゃないかと。

──どういうこと?

このあともCDと違う構成で演奏する曲がいくつも出てきますよね。それらはまあ後で言いますけど、ちゃんと理由があってのことだったりして。で、このメドレーはそれに対する心の準備というか、今回のツアーは何が起こってもびっくりしないでね、っていう小沢健二からのメッセージだったんじゃないかという気がしました。

ラブリー(練習)

──で、♪パラパラパーって「ラブリー」のイントロが始まって、客席が「わーっ!」と沸いたと思ったら、「皆さんがお待ちかねのこの曲はあと1時間後にやります」だもんね。あんな肩すかし見たことない!

大胆すぎますよね。

──そして「1時間後に今の気持ちを高らかに歌ってほしいので、新しい歌詞を練習します」的な話があってみんなで練習したわけだ。新しい歌詞覚えてる?

ええと、「それで LIFE IS COMIN' BACK 僕らを待つ」の代わりに「それで感じたかった僕らを待つ」、「LOVELY LOVELY WAY, CAN'T YOU SEE THE WAY?IT'S A」の代わりに「LOVELY LOVELY で 完璧な絵に似た」ですね。

──歌詞の説明面白かったよね。「絵っていうのはゴッホとかの絵のことです」って言ってた。

会場によっては、ピカソとか葛飾北斎とか例に挙げてましたよ。

──でも俺「LIFE IS COMIN' BACK」って歌いたかったんだけどな……。

いやー、でもそれは今回しょうがないというか。「英語を極力使わない」っていうコンセプトなわけですよね。

──あ、やっぱり? そういうことだよね?

だと思います。この後の曲でも英語主体のパートはほとんどカットされてたし。あと「カモン!」とか「イエー!」とかそういうのも不自然なくらいにナシで。当時は言いまくってたんですけどね。

朗読:大衆音楽

──ここでまた朗読タイム。13拍子の新曲に乗せて、メンバーみんな同じ振り付けで踊り始めて。

あれいいですよね。ツアー中盤からは「一緒にやろうかどうか迷ってる人はぜひご一緒に」みたいなことを言って、観客も踊らせてました。あ、そういえばどうしてここで初めて振り付けを披露したかなんですけど……。

──ああ、そういえば1回目は振り付けなしだったっけ。

この曲って、毎回メロディは同じだけど演奏する人が違うんですよ。1回目、ひふみよの話のときは、主旋律をスカパラホーンズの3人がかわりばんこに吹いてて、この2回目ではキーボードの中西さんが弾いてるんです。だから、この2回目でやっとフロントに立ってるメンバー全員手が空いて、ちょうどきれいに一列に並んで踊れるという。

──なるほど。

最初に振り付けを見せるときは、みんな揃って踊れるほうがいいもんね、……っていうのが2回目から振り付けアリになった理由なんじゃないかと思います。

──ところで朗読の内容は?

豊かな国と貧しい国の価値観。ファーストクラスとエコノミークラスの価値観。俺自分のRX-7他のどのクルマより好き。世界中の街でその土地の言葉の大衆音楽が爆音でかかり続ける。僕らはたいして違わない。この街の大衆音楽の一部であることを誇りに思います。ありがとう。っていう話ですね。

──そこ、じーんと来た。

僕もです。小沢健二にそんなこと言われたらそら泣きますよね。

カローラIIにのって

──この朗読のあとにまさかの「カローラII」が。

しかも中近東風のアレンジで(笑)。

──ていうかこの曲をやるとは思わなかったなあ。

小沢健二が歌い始めたとき、会場ざわざわしましたからね。「(カローラIIにのって)行こうー」っていうサビのリフレインもよかったし。そもそもライブでこの曲をちゃんと演奏したのはサプライズ的なものを除けば初めてだと思う。このCMがバンバン流れてた94年当時の「THE LIFE SHOW」では鼻歌みたいに歌ってましたけど。

痛快ウキウキ通り

──続く「ウキウキ通り」もよかったね。「(プラダの靴が)ウォー!」っていうの初めてやった(笑)。

最高ですよね。「残念無念!」でスカパラホーンズ指さすのも楽しかったし。ただ「カローラII」はクルマのCMソングだし、「ウキウキ通り」には「プラダの靴が」なんて歌詞もあったりして、どっちの曲も主人公は資本主義的な世界で暮らしているわけです。少なくともこれらの曲で描かれている世界は「いちごが染まる」の2人が暮らしている世界とはずいぶん違う。だからこそ「うさぎ!」で消費社会的価値観を「灰色」と表現した小沢健二が、これらの曲にどう落とし前をつけるのかは気になるポイントだったと思うんです。

──うん。

でもそこに対して、先の朗読の後にこの2曲を持ってくるというウルトラCであざやかな回答を見せてくれた。もちろんしれっとこの2曲をやらないこともできたと思うんだけど、それはある意味過去の自分の否定だし、それは僕らにとっては寂しいことです。そうじゃなくて、ちゃんとそこを引き受けつつ、アレンジを変えることで新たな価値観を提示してくれたのが嬉しかったなあって。

──あと、気になってたんだけど、俺が見たとき「長い長いアラビアン・ナイト」のところ「アラビアン・ナイト」は観客に歌わせてたんだよね。あれはいつもそう?

あ、それはどこの会場もそうだったみたいです。

──これも英語の排除っていうこと?

いやー、今回のルール的にはこれくらいのカタカナ言葉はアリだと思うんですよね。これがダメだったら「四月の空はダイヤモンド」も「夜空に高く見てるラッキースター」も歌えなくなっちゃう。僕はどっちかっていうと、「アラビアン・ナイト」はこのツアーの大事なキーワードだから客に投げたんじゃないかって思ってるんですけど。

──どういうこと?

アラビアン・ナイト」=「ほんの一夜の物語を行こう!」っていうのが、暗闇から始まったこのツアーを象徴するテーマのひとつなんじゃないかって思うんです。最初の朗読にあった「世の中の裂け目で一瞬だけ見たもの、聴いたものは消えない」っていう話。そういう夜をひとつずつ重ねていって毎日が過ぎていく。まさにそれって千夜一夜物語のことでしょう?

天気読み

──そして「天気読み」は大幅にアレンジを変えてたよね。

中村キタローさんがシンセベースを弾き始めて、ディスコタイム突入ですよね。

──最初イントロ聴いただけだとこの曲が「天気読み」だっていうのはわかんなかったな。

僕もです。でもこのアレンジ最高にかっこいいですよね。このバンドに合ってて、このバンドでやる意味がちゃんとあったと思う。ツアー最終日の福岡公演を観たんですけど、福岡はこの日は朝からずっと雨で、気温も湿度も高くって、僕はこの曲をツアー最終日のテーマソングみたいな気持ちで聴いてました。

戦場のボーイズ・ライフ(ボーイズ・ライフpt.2:愛はメッセージ)

──「天気読み」から「戦場のボーイズ・ライフ」はメドレーでそのまま続いてたね。でもサビ前の「Come on Boys」がなかったのは、ちょっと寂しかったかも。

ですね。ボーイズ・ライフなんだから、ボーイズに対する呼びかけは欲しかった(笑)。でもそういうの言わないっていうのが今回の「ひふみよ」のコンセプトなんだし、そのおかげでこのツアーが一本筋の通った最高の内容になってるわけで。そう考えるとなんか納得はできるんですよ。

──うん。

ただ、この曲は当時「Hey!×3」のテーマ曲として世に出たわけで、あのでっかい襟のシャツを着て、王子キャラ全開のときに発表されたこの曲が新たな力強さを手にしたっていう感慨みたいなものは感じました。なんかこのツアーでは当時の曲が全部、あの頃よりさらに素晴らしく力強く聴こえた気がします。続きをもっと聞かして!って心から思った。

強い気持ち・強い愛

──「ボーイズ・ライフ」からメドレーで「強い気持ち・強い愛」へ。

ここ泣きますよね。サビのたたみ掛けるようなところヤバい。

──うん、でもこの曲もCDとはずいぶん構成が違ってたよね。

「Stand up,ダンスをしたいのは誰?」の部分がナシで、必然的に「疼くボディーがくっついて花火になって」もナシ。「Stand up」くらいいいんじゃねーの、とも思うんですが、ここを生かすと「dancing in the street,baby」も生かさなきゃならないのでしょうがなかったのかなと。

──それにしてもこの曲の高揚感ハンパないね。

サビの後、みんなが両手挙げてましたからね。で、これ聴きながらふと思ったのは、「喜びを他の誰かと分かりあう」(痛快ウキウキ通り)と「幾つの悲しみも残らず捧げあう」(強い気持ち・強い愛)は、同じことを歌ってるんだなあって。15年の時を経て、初めてそんなことを感じました。

今夜はブギー・バック

──まさか「ブギー・バック」までやるとはねえ。大サービスだよね(笑)。

ほんとヤバかったです。生バンドで「ブギー・バック」。この曲も中村キタローさんのシンセベースがキモでしたね。僕はあんなにきれいなミラーボール観たことないです。で、この曲は演奏する前に小沢健二が「次の曲も皆さんに歌ってほしいところがあります(歌ってっていうかなんていうか)」みたいなことを言って、ラップ部分を観客に歌わせるのが恒例で。

──うん。「何のことかな?」って思ってたら小沢健二がギターであのリフを弾き始めて会場がざわついて、ベースが入ったところで全員が「あ、ブギー・バックきた!」ってわかるみたいな感じだったね。

それにしてもこんな風に何千人がいっしょに歌ったり、もしかしたら全国で何十万人がいっしょに歌えるラップなんて「ブギー・バック」以外にないですよ。後にも先にもそんな曲はない。ちなみに今回のライブでは2つめ以降のラップ部分は省略されてたけど、これはやっぱり「オレスチャアニ」があるからかなと思ってます。あそこはアニしか言えないフレーズですからね。

──で、6月10日のNHKホールはスチャダラパーの3人がゲストで登場したらしいね。

ですね。あとはラスト3公演の京都、高松、福岡も。スチャは合計4会場に参加したみたいです。ていうか、僕6月9日のNHKホールに行ったらちょっと前の席にスチャダラの3人が揃ってて、「いるなら出てよ!」って思ったりもしましたけど(笑)。もちろんスチャダラが出るかどうかっていうのはこのツアーの本質とはあんまり関係ないとこだとは思うんです。それでもやっぱりスチャダラ来ると単純に嬉しいのも確かですからね。

──スチャダラが出るときは曲の構成自体が変わるの?

はい。nice vocalとsmooth rapを混ぜたような感じで、曲の尺もぐっと長くなります。スチャダラ20周年の野音で演ったときと基本は同じかな。ちなみに小沢健二は今回は2番の歌詞(「そんな風に僕ら〜」)は歌ってなかったです。

朗読:自転車

ここの13拍子はギターとベースで演奏してましたね。

──この自転車の話面白かったなあ。安全ボケと言われるほど安全重視の日本人が、自転車に乗るときだけは安全とかどうでもよくなるっていう話。自転車に乗った瞬間に、欧米型に教育された日本人の心の中にアジア人のスイッチが入るらしい。アジア人の魂が起動するらしい。

うんうん、自分の中にも確かにそういう感じあるなあと思って聞いてました。まあ死んでもいいよねー、木も歩くかもねーっていう(笑)。

──あのさ、ふと思ったんだけど、あの「木も歩くかもねー」って言ったっていう友達はBOSEくんじゃないかな。

やっぱり? 僕もなんとなくそう思ってました。真相はわかんないけどそんな感じしますよね。

夢が夢なら

──そんな日本人的魂の話に続いて、中西さんの静かなピアノから「夢が夢なら」。

この「ひふみよ」というツアーによく似合う曲ですよね。日本的な情緒を強く打ち出したこの曲は、当時の小沢健二にとってはちょっと新しい感じだったけど、今この流れで聴くとすごくしっくりくる。

──やっぱブレてないってことかもね。

バックの映像で花火をする小沢健二がちらっと映るのもいいですよね。あれ撮ってるのはやっぱりエリザベスさんなのかな。

麝香

──そしてまさかの「麝香」ね。これはびっくりした。

「LIFE」の頃のメンバーであの頃の曲をやるって明言してましたからね。「Eclectic」の曲をやるとは思わなかったです。でもこのバンドで演奏する「麝香」ものすごくいい。なんならこのバンドで「Eclectic」の曲だけを演奏するライブをやってほしいくらいです。

──でも「麝香」と言えばあのカタコトの外人コーラスじゃない? 「ココーロ」っていうやつ。

いや、あれを真城さんに求めちゃダメだと思います(笑)。

朗読:笑い

ここの朗読パートではメンバーみんな自由な感じで激しく手拍子してましたね。どこで叩いてもいいんだよって言いながら。

──毎回変化をつけて飽きさせないようにっていう配慮はすごいよね。メンバー自身が楽しんでるっていう話もあるけど。ここの主旋律はまたスカパラホーンズが担当?

そうです。内容的には、笑いは自分たちにしかわからないだろうというときにこそ大きくなる。それぞれの民族に共通の「これわかるなー」という感覚があるって話ですね。

──で、そのまま新曲やりますって宣言。

「なんでわかっちゃうんだろうなーっていう曲を書くことに挑戦しました」「にんまりしていただけたら嬉しいです。にんまりと」ですね。

シッカショ節(新曲)

──そして問題作「シッカショ節」。

いやー、客席ざわざわしてましたねえ。小沢健二も「これからものすごいことが起こります」的なことを言ってたし、地方でも「関西初演です」「九州初演です」みたいに煽る感じが毎回あって。

──確かに度肝を抜かれたわなー。

あと地方の祭りの話を出しつつ「お祭りに使ってください」みたいなことも言ってました。誰か企画しないですかね、「シッカショ節」で踊る盆踊り大会みたいの。そんなのあったら浴衣しつらえて行きますよ。

──そういうのやるって言って小沢健二に連絡したら音源提供してくれそうだしね。

で、この曲が実際すごいのは観客みんなちゃんと1・3の拍で手拍子打ってるところですよね。まさに「なんでわかっちゃうんだろうなー」ですよ。あと「もう1回!」つって同じ曲を都合2回やってますからね。そんなのアリかと。ちなみに最終日の福岡では、曲が終わった後でステージ上から紅白のちょうちんが降りてきて、これはスタッフによるサプライズだったみたいなんですけど、小沢健二はそれを見て「これはもう1回やれってこと?」って笑って、結局さらにもう1回やったという(笑)。

──なんにせよ問題作だよなー。

うん、これもし何年後かに小沢健二がニューアルバムを作ったとしても、そこに入る気がまったくしないですからね……。

──ところで「シッカショ」ってどういう意味なんだろう。

んー、わかんないけど「しっかりしよう」っていうことじゃないですかね。ドラマー白根さんのブログにも「これからも「シッカショ」と思います!!!」って書いてあるから、たぶんそういう感じの言葉かと。

さよならなんて云えないよ(メンバー紹介)

──「さよならなんて云えないよ」もアレンジ変えての演奏だったね。「オッケーよ」のところに振り付けあったの、この曲聴いてひさびさに思い出した。

で、この曲はメンバー紹介も兼ねてて。たいていの会場では「メンバー紹介します」って言うんだけど、神奈川では「今日いっしょに演奏している友人たちを紹介します」って言ってました。全体的にすごく楽しそうでしたね。バックのスクリーンには練習スタジオにメンバーが続々集まってくるモノクロの映像が映し出されて。抱き合って再会を喜んでたりして。たまんなかったです。

──うん。あと、こういうメンバー紹介のときにはそれぞれが自分なりのフレーズを織り込んでくるのが普通だと思うんだけど、中西さんはピアノで主旋律を弾いてくれて。あれ良かったなあ。ちょっと震えた。

この曲では小沢健二アコースティックギター担当なんですけど、メンバー紹介のときだけストラトに持ち替えてギターソロ弾きまくってましたからね。あと会場によっては木暮さんがオリジナルの「Black or White」のフレーズを弾いてて、それもじんわり良かったです。

──そういえば小沢健二は「美しさ」のあとの「Oh Baby」っていうところ歌ってなかったね。

そうですね、これも全会場そうだったと思います。観客に預けてました。「Baby」は「ひふみよ」のNGワードなんですかねえ。ちょっと寂しい気もするけど。

ドアをノックするのは誰だ?(ボーイズ・ライフpt.1:クリスマス・ストーリー)

──結局このコンサートでは「おやすみなさい、仔猫ちゃん!」以外の「LIFE」の曲は全部やったっていうことになるんだよね。もちろん「ドアノック」もものすごく盛り上がって。フロアもみんなドアノックダンスしてたし。

ですねえ。当時のライブを体験したことのない若いお客さんもけっこういたと思うんですけど、ドアノックダンスはなぜかばっちりでしたね。

──残念だったのはやっぱ「Hip drop〜」と「meet me meet me in your soul」のパートがなかったところかなあ。

んー、僕もそこはものすごく好きですけど、それはまあしょうがないんです。ていうか「さよならなんて」と「ドアノック」を続けて演奏されたら、もうこっちはアガりっぱなしで冷静な判断力はなくなってるからいいんです。いいと思います!

ある光

──で、「ある光」はサビのところを弾き語りでちょっと歌っただけだったね……。

「この線路を降りたら全ての時間が魔法みたいに見えるか? 今そんなことばかり考えてる なぐさめてしまわずに」「この線路を降りたら虹を架けるような誰かが僕を待つのか? 今そんなことばかり考えてる なぐさめてしまわずに」 この16小節だけでしたね。確かにもの足りないっちゃもの足りない。フルレングスでやろうと思ったらやれない理由はないはずなんです。あの手練のバンドで技術的にできないはずもないし。またはやりたくないならぜんぜん触れなくてもいい。「ある光」のこの特殊な扱いは、かえってこの曲の重要さを際だたせることになったと思います。それが何を意味してるのかはわからないですけど。

──うーん、でも単純にもっと聴きたかったよね。

まあそれはそうですよね。でもどうかな、この16小節を聴けただけで満足って気もしてます。フルで聴いたら胸がはりさけてどうしていいかわかんなくなっちゃうと思うし(笑)。

時間軸を曲げて(新曲)

そして「ある光」に続いて演奏されたのが「時間軸を曲げて」という新曲。

──どことなく「ある光」っぽい気がしたね。

確かにそうかも。曲調もシリアスだし。ただ歌詞に関してはこれまでと一線を画す表現が多かったですよね。「ありがとうという言葉で失われしものに誓うよ 磯に波打つ潮よりも濃く 我の心はともにあると」って。他にも蛇遣いがどうとか砂漠がどうとか。そもそも一人称が「我」ってどういうことだよ、って話ですけど。

──うん、でもこの曲すごくかっこいいよね。

ですよね。ぜひ音源リリースしてほしい。

ラブリー

──というわけでお待ちかねの「ラブリー」のイントロがするっと始まって。どう思った?

あー、ライブもクライマックスだなって。

──俺はそれよりもまず「さっき練習した歌詞なんだっけ!」って思った。

あはは(笑)、それは僕も思いました。

──あと、英語の歌詞をやめたのかなって思ってたんだけど「LIFE IS A SHOWTIME」のところはそのままだったよね。「LIFE IS A SHOWTIME」がOKで「LIFE IS COMIN' BACK」がNGっていう基準はよくわからん。

確かに。「FEEL ALRIGHT」も「IT'S SO TIGHT」もそのままでしたもんね。コーラス部分じゃないからOKっていうことなのかな……。

──ま、いっかそのへんは。

でも英語の歌詞を日本語に置き換えるっていう目的はあったにせよ、「感じたかった僕らを待つ」が今の気持ちを高らかに歌うための歌詞だっていう話は、実際そうなのかもなって思いました。

──「僕らを待つ」って、何が待ってるの?

すごくあっさり言うと、恋人だと思います。本当の恋人と本当の思いを伝え合って感じ合う、そんな時間を待ってるってことじゃないかな。

──「完璧な絵に似た」のほうは?

「CAN'T YOU SEE THE WAY?IT'S A」の置き換えとしてはバッチリなフレーズだし、意味的にもすごく合ってますよね。やっぱり「感じたかった僕らを待つ」相手は「完璧な絵に似た」誰かじゃなきゃって思う。または「完璧な絵に似た」世界に飛び込んでいきたいってことだと思う。このコンサート自体が完璧な絵に似た数時間だったっていうのも感じるし。

流れ星ビバップ

──そして本編最後はもう一度「流れ星ビバップ」。ここは全部を観客に歌わせてたね。

最初から小沢健二が観客に歌を預けてましたからね。そしてメンバーが次々ステージを降りていって、小沢健二もステージを降りて、中西さん、及川さん、沖さんの3人だけで演奏終了。曲の途中でメンバーがステージを降りていくっていうのは「VILLAGE」の頃からやってたけど、やっぱりこれ感動的すぎるでしょう。

──それにしてもみんな歌詞間違えずによく歌えてたよなあ。

小沢健二本人も「13年ぶりなのに皆さん歌詞を一字一句間違えず歌ってくれて。本当にありがとう」っていう話をいくつかの会場でしてました。でもそういう観客への信頼がないと、こんな演出成り立たないですからね。

いちょう並木のセレナーデ

──アンコール1曲目はメンバー半分くらい戻ってきて「いちょう並木のセレナーデ」。ステージバックに星空が広がっていい雰囲気だったなあ。

お客さんもみんなわかってて、ちゃんと手拍子してるし「夜中に甘いキスをして」のところでは「ヒュー!」って冷やかして、小沢健二がそれを受けて「グッ!」って親指を立てたりして。

──カレッジフォークの曲ってことだよね。

でも当時と違うのは、間奏のフレーズがあの頃は沖さんの口笛だったんですけど、今回はGAMOさんのサックスで。ちょっと大人っぽい雰囲気になってましたね。あと「アイム レディー・フォー・ザ・ブルー」の最後のところは「わかってきてる」に歌詞を変えてました。

愛し愛されて生きるのさ

ー一最後にこの曲を持ってくるのニクいよね。これも英語のコーラスが日本語に変わってたでしょ。「You′ve got to get into the groove」のところ「我ら時を行く」だっけ?

そうですね。意味的には「そして毎日は続いてく」「過ぎて行く日々を ふみしめて僕らはゆく」的な感じですかね。それにしても「家族や友人たちと」のところの盛り上がりったら。なんで僕らあのセリフ部分そんなに好きなんだろう。好きすぎる。

──そういえば、この曲を演奏する前に小沢健二は「もう1曲の、感じたかった僕らを待つ曲です」って言ってたと思うんだけど……。あれどういう意味?

うーん、これも僕なりの解釈なんですが「自分を待つ本当の恋人とまだ出会っていない」っていうのが「ラブリー」と「愛し愛されて」の共通点だってことを言ってたんじゃないかな。

──ん?

「ラブリー」は「いつか誰かと完全な恋に落ちる」ことを夢見てるけど、自分はまだ「夜が深く長い時」の中にいて「誰かの待つ歩道を歩いて」る状態を歌った曲ですよね。この解釈はほぼ異論のないところだと思います。で、「愛し愛されて」の主人公にも恋人はいないんです。

──あれ、でも「君の住む部屋へと急ぐ」って歌ってなかった?

恋人の部屋に行くために「突然ほんのちょっと誰かに会いたくなるのさ」なんて言い訳を用意する必要はないでしょう。ふぞろいな心を抱えたまま、やるせなく悩ましい日々を過ごしてる。そんな思いを歌った曲が「愛し愛されて生きるのさ」なんです。愛し愛されて生きることが何よりも大切なことだっていうのはわかってるし、そんな気持ちを愛すべき相手と感じ合いたいって強く思ってるけど、今はまだ「感じたかった僕らを待つ」時期だっていう。

──なるほど。

そう考えると、セリフ部分の意味合いもはっきりしてきますよね。「深夜に恋人のことを思って 誰かのために祈るような そんな気にもなる(日がいつか来る)のかなんて考えたりするけど」っていうことだと思う。それで、これから本当の恋人になるかもしれない、そんな相手がまぶしげにまつげをふせて、ほんのちょっと息をきらして走って降りて来てくれるんですよ。それは素晴らしいことですよね。愛し愛されて生きることの大切さをずっと信じてたからこそ生まれた景色だし。そんな希望に満ちたこの曲で、このコンサートが終わるのは本当に感動的だと思います。

アウトロ

──いや、しかし本当にこの「ひふみよ」っていうツアーは改めて振り返ってみても、ものすごい内容だったね。

うん、完璧ですよね。思い切って言ってしまえば、僕は小沢健二が過去にやったどのコンサートよりも素晴らしかったと思う。過去の曲に関しても、どの曲もただ昔をなぞって演奏してるんじゃなく、小沢健二が当時のオザケンを解体して再構築しているような。楽曲が持っている美しさはそのままに、現在の視点で新しいメッセージを注入して、新しく生まれ変わらせているような。そんな印象を受けました。

──何回も観て気づいたことはあった?

んー、セットリストは基本的に同じとはいえ、やっぱり初日の緊張感はハンパなかったです。ステージも客席も、張り詰めた空気が満ち満ちてた気がする。逆に中野サンプラザNHKホールは地元ならではの親密なムードがありましたよね。5月24日、中野サンプラザのアンコールで小沢健二が客席を指さして「岡崎京子が来てます!」って言って涙を流したのも驚いたし。あのときに会場全体を包んだ驚きと温かさが混ざり合う感じは、ちょっと言葉では言い表せないです。

──そのほかの会場は?

ツアーファイナルの福岡はちょっとスペシャルな演出がありました。その日の朝にワールドカップで日本が勝ったっていうのもあって、スカパラホーンズは「愛し愛されて」で3人揃ってブブゼラ吹いてましたからね。

──わはは(笑)。

ちょうどステージ上のメンバーも11人だったし。ファイナルはもちろんスチャダラも来たし、シッカショ節は3回やったし、最後「愛し愛されて」ではの風船が降ってきましたからね。そして全部終わったあとのスクリーンには「小沢健二 ひふみよ」「めでたく」「千秋楽」の文字が映し出されて。スタッフも込みで最高のチームでツアーを回ってきたっていう感じがしました。

──うんうん。

それと、いいなと思ったのはツアーが進むにつれ、小沢健二自身がリラックスして本当に楽しげになってきて、アンコール後のトークもどんどん長くなってって「この仲間とツアーができることが本当に嬉しい」「呼んでくれたらまた来ます」みたいなことまで言い始めて。13年ぶりにツアーをやってみて、最初は本人も手探りなとこがあったと思うんだけど、観客が熱狂的に迎えたこともあって、たぶんすごく手応えを感じたんだと思う。あのバンドで音出すの単純にすごく楽しいだろうし、次回のライブもそう遠くないんじゃないかな、という印象を受けました。

──じゃあまたすぐ次のツアーとかリリースとかあるかもね。

いやー、基本的にはワールドカップイヤーにしか活動しない人だと思ってるんで(笑)、あんまり期待しないでおくことにします。でも今回のツアーで盛り上がって、またすぐ何かやってくれたりしたら最高ですけどね。