Perfumeは口パクのままでいいのか

Perfumeが広く認知されるに従って「Perfumeってライブのとき口パクなの?ダメじゃんw」とか何も考えずに言い出す人が出てきて、バカじゃないかと思っていた。そういうことじゃねえんだよ。オートチューン処理を施したボーカルはPerfumeの音楽性の根幹に関わる部分だし、その無機質なエフェクトによって彼女たちの感情は増幅されて聴き手の胸によりストレートに届くことになる。つーか口パク=悪とか言ってるおまえらはそもそもライブ観たことあるのかと。口パクであることがPerfumeの素晴らしさの何かを損なうことなどありはしないのだ。
と、ずっとそう思っていたのですが。実は最近ちょっと考え方が変わってきた。
Perfumeのライブは口パクのままでも本当に素晴らしいけど、もし口パクじゃなかったらもっと素晴らしいんじゃないかね。
おれら受け手はたぶんどっちでもいい。リアルタイムで歌っているかどうかというのは受け手にとっては実は些細なことで。生だからよくて録音物だからダメってわけじゃないのは、優れたDJがおれらに何を与えてくれるかを考えれば自明のこととして実感できるはず。
でも、もし自分がPerfumeの側、送り手の側に立ったとしたら、自分の歌声が直接届いてないっていうのは寂しいことなんじゃないかなって思ったんだよね。そしてその寂しさがなければ、もっと充実したパフォーマンスが見れるんじゃないかと思って。実は武道館で初めてそう思った。それまでライブハウスで観てるときにはぜんぜん感じなかったんだけど。あの場所がでかすぎて、完璧すぎたからそう感じたのかも。
だってあれだけたくさんの観客がステージ上にいるPerfumeの3人に向けてものすごい熱を放っていて、3人はそれをしっかりと受け止めて、会場もステージも完全に一体になってて、MCではステージと客席とのコミュニケーションががっちり成立していて、間奏ではあ〜ちゃんが「みんないっしょにー!」とか叫んだりして、リアルタイムのコールアンドレスポンスがばっちり決まっているのに、そこで聞こえてくる歌声だけが“現在”じゃない。会場のファンはみんないっしょに歌ってるのに、当のPerfumeの3人だけがいっしょに歌えない。それってどうなの、Perfumeの3人は物足りなさとか感じないの?と思ったのだった。
「ジェニーはご機嫌ななめ」でファンのコールが特に盛り上がるのは、あの曲でステージ上の3人がリアルに歌ってるからでしょ。あれが口パクだったらこっちもあそこまで熱を込めて叫んだりできない気がする。ビデオコンサートでキャーとかワーとか言うの普通は気恥ずかしいじゃん。どんなにいい映画でもスタンディングオベーションとか普通はやんないじゃん。それと同じで、演者がリアルタイムで届けてくれないとできないことってやっぱりあると思うんだよね。こっちの感動の量とか質とかそういう話じゃなくて、それがいいとか悪いとかそういう話でもなくて、単純にその場の共有感みたいなものはやっぱり損なわれてしまう気がする。
ダブのバンドのライブとかぜんぜんその場でエフェクトかけてるわけだし、Perfumeだってボーカルにリアルタイムでエフェクトかけることもできるはず。紅白は実際サビのコーラス以外生歌だったし。あの3人ならダンスしながらだってぜんぜん歌える気がするんだけど、どうなんだろ。技術的に無理ってことはないと思うから、できればそういうPerfumeも観てみたい気がする。一度ライブ全編それでやってみてほしい。あの3人が歌う声をリアルタイムで感じて全力で反応したい。