ツアースケジュール
- 2026年4月26日(日)大阪府 フェスティバルホール
- 2026年5月1日(金)福岡県 福岡サンパレス
- 2026年5月2日(土)広島県 上野学園ホール
- 2026年5月4日(月・祝)愛知県 愛知県芸術劇場 大ホール
- 2026年5月8日(金)京都府 ロームシアター京都 メインホール
- 2026年5月14日(木)東京都 SGCホール有明
- 2026年5月15日(金)東京都 SGCホール有明
- 2026年5月18日(月)東京都 SGCホール有明(アンコール公演)
ツアーメンバー
- 小沢健二(Vo, G)
- 中村キタロー(B)
- 白根佳尚(Dr)
- 小竹満里(Classic Percussion)
- 稲本有彩(Cello)
セットリスト
- いつか僕は
- ある光
- 愛し愛されて生きるのさ
- ぼくらが旅に出る理由
- いつか僕は #2
- カローラIIにのって
- ブルーの構図のブルース
- 指さえも
- 憂鬱(孤独以外のことは)
- 超能力と無限の藍色
- 台所は毎日の巡礼
- 悪女
- 神秘的(non fingo)
- 天使たちのシーン
- 高い塔
- 彗星
- 流星ビバップ
- アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)
- 流動体について
<アンコール> - ぶぎ・ばく・べいびー
- ドアをノックするのは誰だ?
- 強い気持ち・強い愛(1995 DAT Mix)
- 薫る(労働と学業)
- いつか僕は #3
●前説
ライブ観ながら思ってたことをとりとめなく書いて、あと備忘録的に細かい話もいろいろメモしてたらめちゃくちゃ長いエントリになってしまった。結局すごく言いたいことはこの4つです。
- まるっきり普通のライブじゃなかったしこんなの観たことないよね
- 録音の朗読を流す発明がヤバすぎ
- 初のシーケンス導入はオザケンライブ史を塗り替える大事件
- 90年代がテーマと思いきや実は2010年復活後の曲がメイン
以下で出てくる「先輩」は僕の脳内にしか存在しません。なんでこんな対話形式にしてるのかは自分でもわかりません。では本編をどうぞ。
●イントロ
──すごかったね。小沢健二のツアー。
うん、全部終わった今も思い出すだけで胸がいっぱいになります。
──ていうか、卓也と前回2016年に「魔法的」の話をしてから10年も経つのか!
https://takuyaonline.hateblo.jp/entry/2016/07/06/125634
ですね。先輩も元気そうでよかった(笑)。あれから2018年にツアー「春の空気に虹をかけ」があって、2022年に「So kakkoii 宇宙 Shows」があって、2024年には「Monochromatique」と「LIFE再現ライブ」があって、そのほかにも東大講義とか日比谷野音とかいろいろ。
──コロナ禍で不自由な状況もあったのに精力的に活動してたね。
そして今、2年ぶりのツアー「月と街のAidade」が全8公演の日程を終えたわけですけど、今回はこんなライブ誰もやったことないし観たことない!って内容でしたね。
──わかる。じゃあここからはネタバレ気にせず感想を話していこう。
●ひみつ小道具
今回チケット代が高いんですよ。16,000円。U-23席でも10,000円。アーティスト本人も「チケットめちゃくちゃ高いのに来てくれてありがとう」みたいな話をしてる。でもこれだけ凝った内容だし配布物も豪華だし実際ライブ観た人ならぜんぜん納得感あるんじゃないかと思うんです。とにかく隅から隅までこだわりがすごくて、印刷物の紙やインクのクオリティ見ただけで普通じゃないのがわかるはず。
──でもさ、ここまで来ると「印刷物とかいらんから普通の値段で普通のライブが観たかった」っていう人もいるかもね。
あー、確かにぜんぜん無難じゃないし万人受けする内容でもないですからね。でも刺さる人にはめちゃくちゃ刺さったと思う。少なくとも僕は強烈な刺激を受けて最高に楽しかったし、マジで最高のツアーだったと思ってるんです。そもそもこの過剰さこそが小沢健二なわけで、突拍子もないアイデアを細部まで作り込んでいくその姿勢がなかったら彼の名曲の数々はひとつも生まれてないでしょ。だから今日はそのあたりわかってる先輩といろいろ話したいんですよね。
──うん、今回は特に強烈だったし、なんかただのコンサートじゃなくて立体的なアトラクションを体験したみたいな印象で、そう感じる理由としては「ひみつ小道具」の存在が大きいのかもって思った。
ツアー開始前には「(ライブは)脱出ゲームのように進んでいきます…エンタメで、インスタレーションです」と予告されてましたけど、実際その通りでした。まず会場入口で全員オレンジ色のデカい紙袋を渡されて中に封筒が7つ入ってるんですよね。そのうち3つの封筒はライブが始まる前に開けて準備する。残りの4つはライブ中に指示されたタイミングで開けていく。
──事前に開ける封筒にはクロスタイとラペルピン、あと赤青のメガネ?マスク?が入ってたね。
クロスタイとラペルピンはこれですね。開演前の明るい会場で何千人もの観客がおそろいのタイをしてる状況がじわじわと非日常の入口になってるというか、タイはライブの内容に関わってくるわけじゃないけどなんかかわいい(笑)。本人も「他のひみつ小道具たちを経て、このタイとピンは『あぁ、そんなの貰ったな』くらいになると思います(タイもピンも全力で作って、自信あるのですが)」って言ってて、まさにそういう感じ。前回ツアー「Monochromatique」でモノトーンのネクタイが配られたのの発展型ですかね。
https://www.instagram.com/p/DV5CgLYEXRW/?utm_source=ig_web_copy_link&igsh=MzRlODBiNWFlZA==
──そして赤青のマスクは「アナグリフのメガネ」って呼ばれてたよね。立体に見えるやつだ!って思ったけどそもそもステージは平面じゃないから立体視とかそういうことではない?
はい、今回はステージの照明に赤と青の光が使われてて、この赤青のフィルターを通してそれを見るっていう趣向ですよね。両眼で見ると脳内で赤と青を無理やり合成しようとするから脳がバグってなんだかヘンな感じになる。どちらかの目を閉じるだけで同じシーンでも見え方がぜんぜん変わる。もちろんマスクを使わずずっと裸眼で見ててもよくて、これひとつ発明というか、みんな同じライブを観てるのに見えてるものが違ってるのちょっとヤバくないですか。
──おれ客席が真っ赤な照明で照らされてめちゃくちゃ盛り上がってるときに、試しに片目をつぶって青いほうの眼で見てみたの。そしたら光がスッと消えて自分だけ取り残されたみたいになった。目に見えてるものが唯一の真実じゃないというか現実の足場が揺らぐ感覚があって、これまで味わったことのないヘンな感じだったな。
ツアーに複数回参加してる人ならマスクの使い方次第で同じ曲でも見える景色が毎回変わるし、ひみつ小道具については本人も「『グッズが付いてくる』とかではないのです」って言ってるけどほんとそれ。新しい体験を与えてくれるアイテムなんですよね。
──前回のツアーではホイッスルが配られて3,000人で一斉に笛を吹くって体験をしたっけね。あれも狂ってた(笑)。
そもそも「ひみつ小道具」のルーツは30年前のツアー「レビュー’96」で配られたスポンジ鼻なんじゃないかって説があって。
──何それ?
赤と黄色の丸いスポンジが配られて10,000人を超える観客がみんなして鼻につけるんです。くだらないんだけど妙な一体感があって、今もあのライブのことを思い出すとき真っ先に頭に浮かぶのはスポンジ鼻の景色だったりするんですよね。体験って強い。
●いつか僕は(新曲)
さて、ここからやっと1曲ずつの振り返りです。バンドメンバーがステージに登場して、チェロ、ビブラフォン、ベース、ドラムと1つずつ音が重なっていく。編曲は「Noize」や「ぶぎ・ばく・べいびー」にも参加していた松﨑国生さん。この人のウェブサイトで聴ける「冗談音楽」っていうの面白いですよ。
https://www.kuni0.com
──バンドが演奏してる中、小沢健二の声だけが影ナレで聞こえてきたよね。「このナレーションは今から2時間前のリハーサルで録音してます」って言ってた。まず赤青マスクの説明をして、ニュートンの光の話題、から、いきなりのコール&レスポンス! 「おーい!」って呼びかけられて「おーい!」って返すやつ。
ていうか、今までいろんなコール&レスポンス聞いてきたけど「おーい!」は斬新すぎるんですよ。とっさに反応して「おーい!」って叫んでる自分もわけがわかんない(笑)。
──でも「おーい!」ってなんかよかったよね。
うん、「イエー!」みたいな一般的なコール&レスポンスと違って「おーい!」は相手への呼びかけになってますからね。友達みたい。呼んで呼ばれてそのおかげでなんだか温かい気持ちになってくる。
──そして始まった1曲目は「いつか僕は」っていう新曲だったね。
「いつか僕は 光る湖のほとり まだ若かった父に聞いたことがあった / いつか僕が大人になる頃には 戦争とかはなくなっているのかな?と」いう歌い出しで、幼少期からの半生を振り返るみたいな内容。学校の壁新聞を書いてたとか遠い国に住んだりしたとか。もともと「自伝的な内容のライブになる」って予告されてたけど、こんなに直截的に自分のことを歌ったり語ったりするとは思わなかった。
──びっくりしたね。
あとこの歌詞に出てくるお父さんの小澤俊夫さんがツアー開幕直前に亡くなったんですよね。俊夫さんは福岡で長年ラジオ番組をやっていて、それもあってか縁の深い福岡公演では小沢健二が歌の途中で声を詰まらせる場面もありました。
https://x.com/iamOzawaKenji/status/2046066450352525492?s=20
──この曲は途中で「戦場のボーイズ・ライフ」の音源が挿入されてたよね。「この愛はメッセージ!祈り!光!続きをもっと聞かして!」のところ。
「このライブにはぼくが昔録音した音や昔のぼくの声が散りばめてあります」って言ってましたもんね。ちなみにこの曲はツアー限定の楽曲でツアー終了後はもう演奏されないそうです。最終日には「録音したほうがいいのかな?」とか言ってましたけどね。
●ある光
──そして2曲目で「ある光」。いきなりクライマックス感あったなあ。
小沢健二が卓の上の機材を触ると打ち込みのドラムのビートが始まって、そこにあらかじめ録音された朗読が重なるっていう。
──「LIFE」以降のドラムの音は生演奏に聞こえるけど実は全部サンプリングしたドラムやリズムマシンの音を小沢自身が打ち込みで構築して作ってるって話をしてたね。途中のセリフパートも20代の声だったし。ステージ上の小沢健二が「オザケン!」とコールしたのを受けて若い歌声が流れるの面白かったな。
当時の声もさることながら僕は彼がライブでシーケンスを使ったことに衝撃を受けました。このあとの曲でもボーカルトラックだけじゃなく、過去の音源のビートやストリングスやその他いろんな音が同期で鳴らされる。これまでライブではとことん人力の生演奏にこだわって、ストリングスの音が欲しいからっつって大所帯の服部隆之オーケストラをわざわざステージに呼んでた人が、ここにきて大胆なシフトチェンジをしたなって思うし、これ密かに相当な大事件だと思うんですよね。長くなるからこの話はあとでまた改めて話します!
●愛し愛されて生きるのさ
──続く「愛し愛されて生きるのさ」もまずシーケンスのビートを鳴らして「このドラムなんの曲かわかりますか?」から始まったね。
ウニョウニョしたギターの音も印象的でしたよね。あれがあるだけで曲を包む空気が30年前そのまんまになる。
──「家族や友人たちと〜」の語りは20代と50代それぞれの声で聴けてちょっと嬉しかったな。50代の語りが超アッパーでぐちゃぐちゃだったの最高だった。
●ぼくらが旅に出る理由
そしてここで長尺のストリングス音源が流れて、みんなうっとり聴き入ることになります。32年前にアナログテープで録音されたというあたたかい音。
──あの時間はすごかったね。朗読で「スタジオで録音されたよいストリングスは絶対の音楽パワーがある。映像みたいに聞こえる」って言ってたけど本当にその通りだなって感じた。当時の自分や友達や恋人の姿が見えてくるみたいな音だった。さらに続けてスタジオ録音とライブ演奏の比較の話もしてたでしょ。こういうストリングスは静かなスタジオで何百万円もするマイクを使って録る。ライブのときは騒がしい中で小さなマイクを楽器に付けて音を拾う。どっちにもよさがあるから今日はその2つの音を混ぜて演奏してみます、みたいな。
おかげで彼のストリングスの使い方の特殊性というか暴力性みたいなものをたっぷり感じた気がします。激流のようなストリングスが楽曲を牽引して怒涛のグルーヴを生み出していく。あの快感はなかなか他所では味わえないやつだと思う。
──あの分厚いストリングスが流れる中、1人で生のチェロを弾く稲本有彩さんはたいへんなんじゃないだろうか。
そりゃめちゃくちゃたいへんでしょうよ!(笑) けどそれを言ったらドラムの白根佳尚さんも相当苦労してたと思う。完璧で隙のないビートやストリングスが鳴ってるところに楽器ひとつで果敢に食い込んでいかなきゃならない。無茶ぶりもいいとこです。でもやっぱり生のドラムやチェロが入ることで演奏がちゃんと豊かに、ふくよかになるんですよね。さすが一流の音楽家はすごいな、と思いながら聴き入ってました。
●いつか僕は #2
──バンドメンバーが再び「いつか僕は」を演奏し始めて、ここは4人によるインストバージョン。このタイミングで観客みんな座らされたね。
そして録音の朗読じゃなくステージ上の小沢健二が「♠の絵が描いてある封筒を開けて」と話して、みんな封筒の中の紙を読みながら生の朗読を聞く時間になります。紙は年表みたいになってて1994年「LIFE」期からのいろんな出来事が書いてあるやつ。
──ここの朗読は「カローラIIにのって」の話だっけ。
1995年の元日に「カローラIIにのって」がリリースされて大ヒットして、自分で録音した「LIFE」よりずっと売れたって。
──まあ、あのシングル500円だったしね。
買いやすかったですよね(笑)。とはいえ、あの曲で彼は演奏や録音に参加してなくて歌を歌ってるだけだったから自分の中のある一部分だけが拡大して消費されていくような気がしていたという話。サラサラヘアで草食系でボーダーシャツを着た自身のイメージを彼は「青の自分」と言ってました。「いちょう並木のセレナーデ」や「愛し愛されて生きるのさ」も青。対して「強い気持ち・強い愛」や「戦場のボーイズ・ライフ」はギラギラした赤のイメージ。世間に流布した青のイメージとバランスを取るために当時は赤の自分を強調しようとしてたって。
●カローラIIにのって
──という話を受けて、もしオザケン自身がアレンジや録音も自分でやってたら……という並行世界の「カローラIIにのって」が披露されたんだよね。
CD音源からは当時のボーカルトラックと服部隆之さんによるストリングスのみを残して、あとは生演奏でしたね。チェロとビブラフォン、マリンバが前面に出ていて、ベースレスで静かに始まるんだけど途中からバスドラも鳴ってじわじわ盛り上がる感じ。
──本人は「オリジナルのアレンジも好きだしジャケットもかわいいし」って言ってたけど、おれはやっぱりこの小沢バージョンのほうがカッコよくて好きだったな。CMソングとしてはちょっとチープなオリジナルバージョンのほうがウケるのかもしれないけど。
ちなみに封筒に印刷されてる「カローラIIにのって」のジャケットは赤青のステレオグラムになってて、赤青メガネで見ると立体に見えるんですよね。これ最初気が付かなくて家に帰ってからやりました。
●ブルーの構図のブルース
「カローラII」のあとはまたみんなでさっきの年表を見ます。95年は阪神大震災や地下鉄サリン事件があって当時ギラッとした狂ったイメージを求めてた自分と95年の異様な雰囲気は反響して、そんな焦燥感の中で「さよならなんて云えないよ」と「痛快ウキウキ通り」を録音して、そのまま「LIFE II」みたいなアルバムを作れたらよかったんだけど……という話。
──ここで♦の封筒を開けると「夢で会えて良かったかもね」と書いてあって、3rdアルバム「球体の奏でる音楽」の話題になる。
当時は調子が悪くてドラムもきちんと鳴らせてないし歌も怯えてるみたいだったと振り返ってました。確かにドラムだけ聴いてもこれが「ブルーの構図のブルース」だってのはわかんなかった。ドラムの印象はだいぶ薄いかもです。この曲ライブでやるの30年ぶりでしたね。
──なんか当時のこと思い出してきたかも。95年はハイペースでシングル出して「VILLAGE」もあってテレビの歌番組も出まくって、世の中はオザケン旋風吹き荒れて社会現象みたいな盛り上がりだったのにアルバムはぜんぜん出なかったんだよね。それで96年の秋にやっとリリースされたのが「球体の奏でる音楽」。今も好きな曲はいくつも入ってるしいいアルバムだと思うけどジャズっぽい小品って感じでやっぱちょっと肩透かしというか、あの超盛り上がってたシングルたちはどこ行ったの?って思ったのは覚えてる。
今回その裏側で実は本人はこんなキツい状況にいたんだってことが明かされて、僕としては納得感と驚きの両方があるんですよね。このライブは当時からのファンにとっては種明かしみたいな内容だし、若いファンにとっては今の彼がどうやって現在に至ったかを紐解く入門編みたいなものなのかもしれない。
──こういう話をインタビューで語るアーティストも少なくないと思うんだけど。
でも当時の彼はそれをしなかった。2017年にも「言葉で語ると自分をよく見せようとして、神話を作ってしまうかもしれない(=だから語らない)」(NHK「SONGS」)みたいなことを言ってて過去について自ら語ることはしなかった。でも30年後の今、言葉だけじゃなく実際の楽曲と音源と年表なんかも交えながら丁寧に当時を振り返っていて「こんなやり方があったのか!」って目から鱗ですよ。このライブ自体が自伝であり回顧録であり、同時に今の彼による芸術表現にもなってて、過去であると同時にちゃんと現在なんですよね。しかもその全部を音楽の力でまとめてるから説得力がある。ガチでこんなライブ観たことないです。
●指さえも
──そして「指さえも」。ひさびさに聴いたけどいい曲だなー。
曲に浸ってると間奏で例のやつ始まるんですよね(笑)。次男あまにゃん氏の掛け声にあわせて「Up high! Down low!」つって手を叩く動作をみんなでやるっていう。
──やってみたら楽しかったけど終わったらそのまま曲に戻っていったから「今のなんだったのかな」感は否めなかったかも(笑)。
ちなみに広島公演ではステージにあまにゃん本人が登場して一緒にやってくれました。
──曲の最後にも朗読が流れてたよね。
曲のアウトロで朗読が始まって「この曲はここで突然サブドミナント7thというコードになって……」という解説が入るんですよね。こんなの演奏しながらしゃべるわけにいかないし、朗読を録音しておいて流す以外に不可能で、このスタイルは2025年の日比谷野音が初出だったと思うんだけど、こんなことやった人を少なくとも僕は知らないし、これライブ史に新たな1ページを加える発明なんじゃないかと思うんですよ。ストリングス聴きながら「このストリングスは映像みたいで」って語る人はいなかったし、ビートを鳴らしながら「中音域が出っ張ったこのドラムいいでしょ」みたいなこと話す人もいなかった。誰もやろうと思わなかっただけかもしれないけど、でもこれを体験した僕らはこの発明を面白いと感じてるわけですからね。よくわからんけど無限の可能性を感じます。
──じゃあこれから同じようにライブ中に朗読流すアーティスト出てくるかな?
どうでしょうね。面白い試みだと思うんですけどね。
──あと朗読の最後で「ぼくの歌詞にはブルース、ブルーズという言葉がよく出てくる」って話があったよね。悲しさを他人事のように見ているちょっとコミカルな感覚だって。
その「ブルーズ」の感覚がこのライブで言及されてる「青」と重なってるのかもっていうのはちょっと思いました。
●憂鬱(孤独以外のことは)(新曲)
ここから数曲はシーケンスなしの生演奏パートです。よく考えたらバンドメンバーが全部で5人って復活後のツアーでは最小編成かもしれない。この人数でこの音を出してるのかなりすごい気がします。
──ギター、ドラム、ベース、チェロ、クラシックパーカッションの5人だよね。あんまり見たことない編成だけど。
そうなんですよ。乱暴に言っちゃえば打楽器×2と低音弦楽器×2ですからね。クラシックパーカッションはマリンバ、ビブラフォン、グロッケン、ティンパニ、チューブラーベルなど複数の楽器を扱うから小竹満里さんはずっと忙しそうにしてます。“マリコの部屋”で「あのこもわりと忙しいようで」って誰かが言ってたけど(笑)。
──2曲目の新曲「憂鬱(孤独以外のことは)」については「当時の自分が憂鬱でブルーズ丸出しの曲を作ったらこういう曲になってたはず」「1996年に毎日のアップダウンを現実として書く力があったらこんな曲ができてたかも」と話してたよね。実際今の曲調とはちょっと違う感じがした。
「Noize」なんかもそうですけど“昔のオザケン”が書いたみたいな曲をさらっと出してくるのヤバいですよね。それはそうとこの曲なんだか「悪女」と雰囲気が似てないですか? ちょっと兄弟みたいな曲だなって思いながら聴いてました。
●超能力と無限の藍色
──そしてポロポロとアコギを弾き始めて「超能力と無限の藍色」。
これ「台所は毎日の巡礼」とか「薫る」と同じく日常生活の尊さを歌ってくれてるの最高に好きなんですよね。
──「超能力とは日々の力のことじゃないか?とかと思うのだよ」ってところいいよね。ところでこの曲で全国の地名言うところあるじゃん? ツアーで回る都市ってわけでもないんだよね?
最初の6つ「福岡・広島・大阪・京都・東京・名古屋」はそうですけどね。今回のツアーは西高東低で、宮城とか北海道とかはなかった。僕が最初に観たオザケンのライブは1994年「THE LIFE SHOW」の札幌公演だったし、いつでも札幌公演があったら喜んで駆けつけるつもりなんですけどね。
●台所は毎日の巡礼
──「台所は毎日の巡礼」好きだなあ。この曲は音源リリースされてないのになぜか歌えるんだけど。
前回のツアー「Monochromatique」で歌詞カード見ながら客全員で歌ってましたからね(笑)。CDは出てないけど2024年の「tiny desk concerts JAPAN」でも演ってたから僕は録画で何度も観てます。
──最後「生きるー」で終わったかと思いきやまた続いてくのいいよね。いい曲は長く聴いていたい。
●悪女
ここの朗読では「当時の自分はバランス悪くなってたし無理して全部作詞作曲なんてしないでカバーアルバムとか作っておけばよかった」みたいなことを話してましたね。「『カローラII』がヒットした理由には僕の声の力もあると今はわかる」って言ってて「それ僕らはとっくにわかってたよ!」と思った(笑)。
──あのさ、これどこで言おうかと思ってたんだけど、このライブ全体的にずっとボーカルめちゃくちゃよくなかった?
わかります! 歌びっくりするくらいよかったですよね。声が腹から出まくってて力強くてのびやかで。失礼ながらこの人こんなに歌うまかったっけ?って思うほど。
──今回のツアーは比較対象として若い頃の歌声も聴けるから特にそう思うのかも。
当時はやっぱり線が細くてかわいらしいですからね。
──畳み掛けるように歌ったりラップするパートも多くて、どこでブレスしてるんだ?息足りてる?ってなったし。
しかもずっとギター弾きながらですからね。ちょっと超人的なボーカルだなって思いました。このツアーがすごかった理由には彼の歌の力がめちゃくちゃあるとわかります。
●神秘的(non fingo)
──ここで♥の封筒を開けたよね。封筒には尖った鉛筆とハガキが入ってて、ここにライブの感想を書いて夜明けまでにポストに投函してくれって言われた。
ですね。ライブで料金後納郵便のハガキ配ったアーティストとか聞いたことないですけどね(笑)。僕も夜中の居酒屋で書いてポスト探して出しました。
──封筒の中の紙にはニュートンの「Hypotheses non fingo(私は仮説をつくらない)」という言葉について書いてあった。

だいぶ深い話でしたよね。ここに至るまでには「東大900番講堂講義」の存在がかなり大きいと僕は思ってるんです。
──2023年に東京大学の講堂と渋谷公会堂で計2回だけやったやつだよね。
小沢健二の朗読はいつも視点がユニークで我々になんらかの気付きを与えてくれる内容ですけど、基本的にずっとエッセイ的な形式をとってましたよね。曲の合間に耳で聞いて理解できる内容になってた。それが東大講義ではオリジナルの教科書が用意されて、そのページをめくりながら彼の話をじっくり聞く形になってて、これだと難解で抽象的な内容もすっと頭に入ってくるんです。
──確かにテキストがあることでずいぶんわかりやすくなるかも。
ここに来て朗読と講義のハイブリッドというか、さらに深いところに踏み込んでる。こんなのファンを信頼してないとできないと思う。
──面白いなあ。
それにしても「神秘的」のこのアレンジすごかったですよね。オリジナルが“静謐”な印象だとしたらこれは“荘厳”って感じ。ちょっと怖いくらいの迫力がありました。
●天使たちのシーン
──「天使たちのシーン」は最初CD音源を流して、その後もオリジナルの歌や演奏を多めに混ぜていくスタイルだったね。
でも同時に生で歌いまくってたしギターも弾きまくってましたよね。僕はこの曲からラストにかけての流れを勝手に「ストラトカッティングフィーバータイム」と呼んでます(笑)。ずっとギターをジャキジャキ弾き続けてるの生っぽくてめちゃくちゃ好き。あとこの曲のボーカルもものすごかったですよね。生命力に満ち満ちてて、原曲の静かな印象を塗り替えるくらいの躍動感を感じました。
──「この曲は立って聴こう」って言って観客を立たせたのも納得の演奏だったね。ずっと静かな曲だと思ってたのにな。
実際曲の途中で何度も拍手が起きてましたね。今回なんでこんなに“生命の熱をまっすぐに放”ってるみたいに、躍動感ある感じで聞こえるんだろう、何が違うんだろうって考えてたんですけど、何度か観てるうちに答えが見つかったんですよ。
──え、それは何?
大きな違いはフロアタムなのかなって。ドラムの白根さんが曲の途中からフロアタムを叩き始めて、その音がじわじわと効いてくるというか。
──あと上のほうで響いてる小竹さんのビブラフォンとチューブラーベル、真ん中でずっと鳴ってるギターのカッティングもよかったと思うんだ。
それと僕がしびれたのは終盤のギターソロ。普通はバッキングにシーケンスを使って、ソロは生演奏で弾くじゃないですか。でも今回はあえてCD音源そのままのギターソロを流してたんですよね。
──だよね、途中で気付いて「あれ?」って思った。
最初は驚いたけど、実際聴くと当時のギターソロが当時のボーカル以上に雄弁で、あの頃の若い小沢健二がそこにいたしあの頃の若い自分がそこにいた。こういう趣旨のライブであのギターソロを生かしたのマジで正解だなと思いました。その後アウトロのピアノも生かしてて、あの音源はある意味歌声やストリングスの音色以上にみんなの記憶を呼び覚ましてくれた気がします。
●高い塔
──そのまま「高い塔」が始まって、この曲ものすごくなかった?
わかります。鬼気迫るものがあった。
──シーケンスのストリングスが効いてたよね。
歌もすごかったし、これまで聴いた演奏の中でも一番だった気がします。曲が終わった瞬間自分の呼吸が浅くなってたのに気付きました。
●彗星
──そして打ち込みのビートに開放感あるストリングスが乗って「彗星」が始まるわけだけど。
この「彗星」もすごかったですね。本人が「昔はあれほど熱くなる曲ではなかった。それが長く聴かれて、曲が力を得てきたんだと思う」と言ってたけど本当にそう。歌と演奏がよかっただけじゃなく、観客の熱がこの曲に魔法をかけてたと思う。
https://x.com/iamOzawaKenji/status/2055078761302028693?s=20
●流星ビバップ
──そしてスカパラ沖さん、西村奈央さんと同じやり方で作った2曲を続けてやります、って話から「流星ビバップ」。みんなブチあがってたね。
オルガンいなくても「流星ビバップ」やれるんだ?っていう驚きと喜びがありましたね。
──手拍子しながらヘイヘイ叫んで精根尽き果てた(笑)。
広島公演はこの曲でギタートラブルがあってハンドマイクでの歌唱になりました。ギター弾かずに歌う姿はひさびさに観た気がするけど、この曲はハンドマイクも似合うんですよね。結果オーライだったと思います。
●アルペジオ(きっと魔法のトンネルの先)
──「アルペジオ」は東京初日「岡崎京子、あんたに!」って叫んでたよね。
ね、本人歌いながら泣いてましたね。あんなの観てる我々も泣くってば。これほどキャリアのあるアーティストなのに心(うら)の揺らぎや高まりみたいなものがステージだと全部ダイレクトに面(おもて)に出てくるんだなって感じてグッとくる。嘘がないし虚勢も張らない。だからこそこんなに感動的なのかなって。
──うんうん、この曲もめちゃくちゃ盛り上がったなあ。
最後のラップはもう絶叫だしピック叩きつけるようにギター弾いてるしで否応なしにブチあがりましたね。
──最初CDで聴いてたときは静かめな曲だと思ってたんだけどな(笑)。「天使たちのシーン」といい「アルペジオ」といい、なんかどうかしちゃってて最高だよね。
「アルペジオ」はここ数年のライブではずっと「いちょう並木のセレナーデ」を途中で挿入して「川の組曲」として歌われてましたしね。でも今回単独で演ってるのを聴いてこっちのほうが絶対いい!と思いました。この曲の底力を見た気がします。
●流動体について
──そして本編ラスト「流動体について」もアツかった。
「彗星」も「アルペジオ」も「流動体について」も昔はここまでじゃなかったはずなんですよ。それがやっぱり年月を重ねるうちに曲が育ったのか我々が育ったのか、ライブの一体感や力強さが増してきて、90年代の曲を超えるアンセムになりましたよね。
──あと今回のツアーでオザケンが90年代に表舞台から去った経緯を聞いたことで、この曲がより深く届いたっていうのもあるんじゃないかな。ある意味「ある光」と対になってる曲だと思うし。
ですね。あとこれは余談なんですけど僕この曲にひとつ思い出があって。
──なになに。
この曲がCDでリリースされた当時、近所のローソンに入ったら店内でこれが流れてて最初普通に聴いてたんですけどギターソロが始まったところで感情がぐしゃぐしゃになった。
──確かにこの曲のギターソロはちょっと、なんだろう、異形というか……。
街で流れる普通のポップソングとは明らかに違うでしょ。ぶっ壊れてて美しくって。1人で聴いてるときは気付かなかったけどコンビニで聴くとその違和感が増幅されて意味わかんなくなって、僕この曲のギターソロが世界で一番好きなんです。
●ぶぎ・ばく・べいびー
──アンコールは「ぶぎ・ばく・べいびー」からスタート。スチャダラのラップパートを音源で聴かせてたね。
今回の構成だと違和感なかったですよね。
──でも今回「ぶぎ・ばく・べいびー」をやって「今夜はブギー・バック」はやらなかったわけだ。
というか「ブギー・バック」も「ラブリー」も「いちょう並木」も「東京恋愛専科」もやってないし、ここ数年欠かさずやってた「フクロウの声が聞こえる」も入ってなくて、そういう意味ではだいぶ異色のセットリストなんですよね。
──言われてみればそうだった。でもやってない曲のこととか気になんなかったな。満足度高かったし情報量多すぎてそれどころじゃなかったし(笑)。
この曲の「満月より光るよ記憶」って歌詞は「月」をテーマにした今回のツアーにおいてすごく象徴的で、ルナティックな幻よりも今この瞬間の現実の記憶こそがずっと輝くんだよって、そういうことなのかなと思ったりしました。幻も素敵なんですけどね。
●ドアをノックするのは誰だ?
そしてあのめくるめくストリングスが鳴って「ドアノック」が始まります。
──最高だったね。でも会場観てるとドアノックダンスをやってる率はあんまり高くなかった気が。
それはそうかも。たぶん若いファンが多かったせいじゃないかな。もちろん僕らみたいに90年代から通ってる層もたくさんいるけど、特にここ数年90年代を知らない世代が増えてきた印象があるんですよね。小沢健二かクロマニヨンズか、くらいに。
──それはそうと、この曲の途中で若いオザケンの歌が流れて、その声があまりにかわいくて衝撃を受けたな(笑)。
あと原曲で「Hip drop, hip little drop, my honey guy」のところ日本語になってたけど、なんて言ってるのか最後までわかんなかったんですよね。「一生いっしょにいてくれや」的なやつだと思うんですけど。→識者に聞いたところ「一緒に導かれたいんだ」だったそうです!
●強い気持ち・強い愛(1995 DAT Mix)
──「強い気持ち・強い愛」はまずビートをガンガンに鳴らしつつ「ぼくが今まで録音したドラムで一番お金と時間をかけたのがこのドラム」って話してたね。「めっちゃくちゃ気持ちよくないですか」「このビートは1時間でも聴ける」って。
お金と時間が実際どんだけだったかは筒美京平さんが亡くなったときのこのポストに詳しいです。
https://x.com/iamOzawaKenji/status/1327820588539232259?s=20
このビートはスカパラ青木達之さんに「何日もスネアを叩いてもらってキックを踏んでもらって」録音した音源を小沢健二が1音ずつ編集して完成させたって話してましたね。この曲についてはもう言うことないです! 騒いで叫んで最高だった!
●薫る(労働と学業)
「強気強愛」で最高潮の盛り上がりを見せたあとはすっかりライブの定番曲になった「薫る」でしたね。
──この曲でクールダウンかなって思ったけどなんかぜんぜん楽しくて高まってしまったよ。
わかります。「薫る」もどんどん育ってる楽曲ですよね。途中でパンパンパンって手拍子するところ、いつのまにかみんなやってるけどいつも忘れててやれたことない。
●いつか僕は #3
──そして迎えたエンディング。みんな座って♣の封筒を開けて、「Aidade」の話だったね。
どちらかに極端に振れてしまうんじゃなく“Aidade”踏ん張るんだって話。狂気と妥協の間で、月と街の間で、赤と青の間で毎日が続いていく。で、この紙によると「スタジオ録音」と「生演奏」だとスタジオ録音が狂気側にあるんですよ。

──ほんとだ、なんとなく一般的には生演奏のライブのほうが熱狂的に盛り上がって狂気に近づく感じがするけどな。
うん、僕もそう思ってたんですけど違うんです。小沢健二にとってはスタジオ録音こそが狂気であり赤の自分なんですよね。だからSNSなんかでは「録音じゃなく生の演奏、歌声が聴きたかった」みたいな声もありましたけど、たぶんそういうことじゃない。本当にヤバいのはこれまで録音された音源の数々で、小沢健二という人はもともと録音の鬼なんですよね。朗読でも言ってた通りSTUDER A827(24chアナログマルチテープレコーダー)を個人持ちしてレコーディングしてた人だし。「強気強愛」の音源をプレス工場に送ってからまた歌い直してミックスとマスタリングやり直した人だし。そんな彼が偏執狂的なこだわりのもとに録りためてきた極上の音源がライブではずっと封印されてきた。でも今回その狂気の音をライブの生演奏とあわせて解き放つことで無限の可能性を手に入れてしまった。鬼がとうとう金棒を手にしたわけですよ!
──そう言われると大事件かも。
もちろんこの過去音源を混ぜて演奏するスタイルが今回だけの試みなのか、今後も続いていくのかはわからないです。でもとにかくこのシーケンス導入が今回のツアーの超デカいトピックであることは強調しておきたいです。
●アウトロ
──というわけで細かく振り返ってみたけど、確かにこんなライブ観たことないよね。最初「自伝的なライブになります」って言ってたから、それっぽく時系列に沿ったセットリストなのかな、くらいに思ってたけどガチで自伝そのものだったし、最終的にはそれを超える感動があった気がする。
このライブでは計22曲が披露されたけど、うち12曲が2010年以降の曲なんですよね。90年代がテーマみたいに思ってたらライブの中心にあるのは実は新しい曲たちで、あとから数えてちょっとびっくりしました。
──ほんとだ。でも実際ソロでの90年代の活動期間は93年から98年までの約4年半だけど、2010年のライブ再開から現在までを数えるともう16年経ってるんだよね。
そうなんです。今の活動が充実してるからこそこの内容のライブができたっていうのはあると思う。ただこれを観ちゃうと「『刹那』とはなんだったのか」や「『Eclectic』の作り方」みたいなテーマも語ってほしいなと思ったりしますけどね。
──だよね。卓也はツアー全体を振り返ってみてどうだった?
5月15日の千秋楽は事前に「この日は完璧なやつをやります」って予告された通り、マジで完璧なライブで腰抜かしそうになりました。どの公演もそれぞれによさがあったけど千秋楽は特に最高で最強だった。あと5月18日のアンコール公演はアフターパーティみたいな楽しさがあって、これほんとに不思議なんですけど同じシーケンスを使って同じセトリでやってるはずなのに各公演ぜんぜん空気が違うんですよね。ライブは生ものって言うけどそれにしたってものすごいな!と思いました。
──5月18日のアンコール公演はちょっと特別で、アンコール前に弾き語りパートが追加されてたよね。「フクロウの声が聞こえる」「ラブリー」「シナモン(都市と魔法)」の3曲。
そう、これも普通じゃなくて、ストリングスやビートがシーケンスで入ってて相当カッコよかったです。「フクロウの声が聞こえる」のストリングス音源は未発表でこれが初公開って言ってました。「ラブリー」はやっぱグッと来るし「シナモン」は改めていい曲だなって思いました。
──最後「生活に帰ろう」って言われても「帰りたくないです!」って気持ちになっちゃったな。
ですよね(笑)。あと、これはすごく個人的な感覚なんですけど、このツアーはこれまでの小沢健二のライブと違う特別な何かがあった気がする。いつものライブが生活から離れて遠くに連れていってくれるものだとしたら、このツアーはどこか現実に片足を置いたまま、まさに月と街の間で鳴ってる音楽というか。天から降ってくる音じゃなく等身大の小沢健二がそこにいてこちらに語りかけてくる。そんな感覚がいつも以上に強かった気がするんですよね。
──そういえばいくつかの会場で映像収録が入ってるって話があったけど、あれはどうなるのかな? ライブ映像がリリースされる?
まだそんなこと言ってるんですか。毎回撮ってるけど円盤とかは出ないんですよ! これまで出たことないし、たまに配信で数秒観れたらラッキー!くらいのやつなんで期待しちゃダメです。これ覚えといてくださいね!
──わかったよ。記憶を反芻しながら生きていくことにする……。
そうしてください。それにしても今回のツアー本当によかった。なんだか集大成みたいなライブだったけど、頼むからまだ引退しないでほしい(笑)。続きをもっと聞かして!って思ってます。