“お笑い”というのはオルタナティブな視点の提供であってほしいと思う。代わり映えのしない日常を生きるおれたちに、想像もつかない自由な世界を提示して、受け手の意識を解放してくれるものであってほしい。ここではないどこかへ連れていってほしい。
しゃべりのスキルがいくら高くても、いくらボケとツッコミのテンポがよくても、それだけでは笑いの本質に手をかけることはできない。すぐれた話術は笑いを生み出す必要条件ではあっても十分条件にはなり得ない。早弾きの得意なギタリストが必ずしも魅力的なフレーズを弾けるわけではないように。スキルの高いラッパーがその言葉で真実を射抜けるとは限らないように。
最低限の技術はあって当たり前。努力や練習ではどうにもならない、その人の圧倒的な才能と非凡な発想がすべてをなぎ倒す瞬間をこそおれは見たい。クラスの人気者程度の人たちががんばってもたかが知れてるんだし、だからこそ選ばれた人はとことん道を極めて、おれたちをもっともっと喜ばせてほしい。