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「風立ちぬ」堀越二郎の空洞

風立ちぬ」すごく面白かった。二郎のクズっぷり推せる。あれだけ虚無い(きょむい)人物を主人公に据えつつ前向きな感動みたいなとこに持っていくのがすごかった。

ただ、二郎が菜穂子に対して薄情だとか、戦争産業への従事に伴う葛藤がないとか、そのあたりの違和感はすでに各所で語られていて、それは二郎が飛行機に夢中になりすぎてほかのことが目に入らないせいだって捉えられてるみたいだけど、自分はなんだかそういうことでもない気がしたんですよね。

二郎はすごい飛行機を作ることさえも実はどうでもいいと思ってるんじゃないかと思う。ほかにやることないからやってるだけ。ただ流れていくだけの人生を埋める暇つぶしで、どうせ暇つぶしならせめて美しく飛んだほうがいいだろうっていうくらいのもんじゃないのかしら。

菜穂子のことも自分のこともどうでもよくて、菜穂子の死にも自分の生にも興味がない。だからこそあの映画は、これ見よがしに「生きねば。」なんていう空虚なキャッチコピーを掲げるしかない。もとから生きる意志がある人にわざわざそんな言葉はいらないわけだし、現実から目を逸らして前向きっぽいことを言ってみることで、まともな人になった気分を味わいたいっていうのはよくあることですし。

二郎の抱える空洞こそがあの映画の独特の空気を形作っていて、その空洞を感じる人とそうでない人とで、作品の見方はだいぶ変わってくるだろうなーと思いました。