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犬を飼っていた(2)

思い出

何の話かって言うとどこにでもあるような犬の話なんですけど。子供の頃から一緒だった大(アイヌ犬)は、おれが高校のときに死んだ。15年くらい生きたからまあ大往生だったと思うけど。でもそれからやっぱり家に何かが欠けたような感じがあって、2、3年経った頃、家族の誰からともなくまた犬飼おうって話になった。

大は外につなぎっぱなしであんまりかまってやれなかったから今度は室内犬にしようってのは両親と話して決めた。どんな犬がいいかね、ビーグルとかどうよ、いやそういう犬はうちには上品すぎる気が、とか話したりして、どっちかっていうとパグみたいなぶちゃーっとした子がうちにはお似合いなんじゃないのって。それで結局パグのプーがうちに来ることになった。

仔犬のときはほんと手のひらに乗るくらいちっちゃくて、1日20時間くらい眠ってて。最初寝るときはケージに入れてたんだけど、あまりに寂しがるので結局人と一緒の布団で寝ることになったり。枕元で寝てるとあいつブースカいびきかいたりしてうるさかった。

その頃おれは大学生でわりとヒマだったから、プーと一緒に近所でやってた犬のしつけ教室っていうのに通ったりもしたのだった。散歩のときにちゃんと飼い主と並んで歩く訓練したり、待てとかおすわりとか教えたり。車に乗っけて近所の土手に行って、いっぱい走ったりしたのも楽しかった。

おれが実家を出て東京に引っ越してからは、老夫婦の相手にちょうどいい感じ。甘えっ子で手がかかるところも含めて。たまにおれが実家に帰ると、最初きょとんとした顔して、おれのことがわかったとたんに照れ隠しみたいにはしゃぐのだった。「忘れてないですよ! 帰ってくるの待ってましたよ!」。両親が甘やかしたおかげで、しつけ教室で覚えたことはすっかり忘れてしまってたけどまあいいかって。

晩年は目も悪くなって、耳もたぶん聞こえてなくて、おむつも手放せなくなっていた。おむつは、赤ちゃん用の紙おむつに父親が尻尾用の穴を空けて履かせていた。おれが実家に帰っても、その頃はもうわかってるんだかわかってないんだか。寂しいけどなでてやるくらいしかできず。結局数年前に死んでしまって、実家の両親はもう犬は飼わないんだって言ってる。犬を飼っても自分たちのほうが先に死んでしまうから。それで結局実家には穴の空いた紙おむつだけがたくさん残ったままになってる。