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泥炭地

思い出

おれが育った実家の近くには大きな沼があって、その一帯は「泥炭地」と呼ばれているらしかった。いま調べてみたら、泥炭というのは「主に低気温地域の沼地で、植物遺骸が十分分解されずに堆積して形成される」(Wikipedia)ものだそうです。なるほど。
沼の周囲にはセイタカアワダチソウやらなんやら、小学生の背丈よりも高い草が生い茂っていて、それらをかきわけて沼のほうに近づいていくと、足もとの土がだんだんと湿ってくる。灰色の土を手にとるとひんやりと粘土みたいな質感で、丸めるときれいな形で丸くなって、そのまま家に持って帰ることができた。
持ち帰ったそれは直径2cmくらいの小さな球体で、おれはそれを勉強机の上に置いてみる。そして何週間か放っておく。すっかり乾いて固くなった灰色のその球体に、ふと思いついてプラカラーで色を塗る。その頃好きだったアニメに出てくる丸顔のキャラクターを描いてみる。目鼻なんかの表情も面相筆で細かく描き込んで、思いのほか上手く描けたので満足だった。特に誰かに見せたりはしなかった。
結局あれどうしたのかな。集めていたプラモデルを捨てるときにいっしょに捨ててしまったのかもしれない。