解題・ミュージックマシーン(3)

前回、前々回といきなりウェブメディア論みたいになってしまってちょっとはずかしい。当時はこの手の話題は意識して一切近寄らないようにしてたのに。

だから今回のこの一連のエントリは、サイト終了から1年経ってやっと種明かしをするような感覚もあったりする。ある個人ニュースサイトの管理人が何を考えて毎日の更新を続けていたか。そのへん整理する意味も込めて、ミュージックマシーンの7年間についてこの機会に書いておきます。

というわけで、今日はミュージックマシーンを毎日どんな風に更新していたかという話です。せっかくだからその具体的な手順をメモしておきたい。

まずミュージックマシーンのニュース収集は、企業ニュースサイトとCDショップサイトの確認から始まる。大量のブックマークをタブブラウザで一気に開いて、気になる記事を見つけたらテキストエディタにとにかくコピペ。スポーツ新聞など複数の媒体で報じられてるニュースは、それぞれの記事を比較して写真がいいものや、他にない情報が載っているものにリンク。あとはアーティスト公式サイトの定期巡回ももちろんしていた。当時はRSSも普及してなかったから、はてなアンテナに何百個もURL登録したりして。そのほかはCDショップ店頭の予約表とかライブハウスのフライヤーとか、実生活から情報を集めることもけっこうあったと思う。

CDショップのサイトは、HMVは詳細載ってることが多いけどタイトル表記がデタラメだとか、Neowingが実は情報早くてまとまってるとかいろいろ個性があったりして。そうやって見つけた情報を@TOWERで品番検索して確認したりとか。そういう細かいTipsはたくさん蓄積されてたかも。

そんで大量のテキストとURLを収集したら、それを上から順にどんどん編集していく。コメントもこのときにいっしょに書いていく。全部終わったらなんとなく順番並べ替えて、HTML作ってポチッと公開。

ちなみにHTMLエディタはDreamWeaverを使っていた。ミュージックマシーンを始めた当時はブログなんてものもなかったからね。1カ月ごとに過去ログを移すのがめんどくさかったけど、それ以外は概ね快適だったと思う。

そしてサイトの更新は毎日ほぼ365日にわたって続くものだから、ニュース収集からコメント執筆、HTML作成までの一連の流れを90分前後で終わらせるのを自分の理想としていた。遅いときは2時間以上かかってしまって反省したり。当時はあの分量をどうやって?って言われたりもしたけど、慣れればけっこう早くできるものです。コツは、悩まず頭を使わず、ひたすら作業として進めること。

当時ぼくは出版社に務めていて毎日12〜15時間は働いていたので、ミュージックマシーンは決してヒマつぶしにやっていたサイトではないです。むしろ多忙の合間を縫って、意地になって更新していたと言ってもいい。更新時間をどうやって捻出するかはミュージックマシーンの最大のテーマだった。とにかく毎日の睡眠時間を90分ずつ削って、睡魔と闘いながら更新していた記憶がある。

そしてミュージックマシーンのテキストを書く上でぼくがもっとも気を遣っていたのは「書きすぎない」ということだった。ニュースは機械的にどんどん集めていく。ニュースに対するコメントは脊髄反射でガンガン書いていく。で、最後に必ず推敲して余計な部分をガシガシ削っていた。ミュージックマシーンの更新作業のうち、頭を使うのはこの部分だけ。勢い任せで書きすぎた部分を最後に削る。その作業がミュージックマシーンをギリギリ“うざくない”サイトにしていたんだと思う。

ニュース収集とコメント執筆は脳が止まっていてもできたし、だからこそ毎日続けられたのかもしれない。私生活で何があってもミュージックマシーンを更新しているときは頭を空っぽにできた。体調が最悪なときも、飼っていた猫が死んだときも、ミュージックマシーンの更新をしているときだけは何も考えずにいることができた。毎日自動的に生まれてくるニュースに対してリアクションするというシステムは楽だったし、自分の性格にも合っていたと思う。特に言いたいこともなく、本当にただ機械のようにニュースを集めて、機械的にサイトにアップしていくだけ。ニュースが自分の中を通り抜けていく感覚が常にあった。